見知らぬ指輪

新吉

第1話 見知らぬ靴は

 見知らぬ靴がある、かわいい。

 ある晴れた日にごみ捨て場に靴が捨ててあった。

 横目でちらっと見ながら、歩く。


 今日は雨。私の好きな雨。だけど濡れたくはないから傘をさしている。いつものボロボロのスニーカーではなく、撥水加工されている雨用のスニーカー。買ったばかり。水溜まりも怖くない。


 ごみ捨て場の前を通ったら、あのかわいい靴がまだあって、新たに折れたかさが捨ててあった。びしょ濡れの靴。子ども用だったら、履けなくなったんだろうなって思うけど。


 落ち着いた色味をしたパンプスで、ヒールはない。くすみブルーっていう、派手じゃない色と形。赤い靴でもない。ガラスの靴じゃないけど私には入らない。かわいい女の子のサイズ。ごみ捨て場から持っていきたいわけじゃない。


 そしてこの折れたかさ、真ん中から折れてる。どう使ったらこんな折れ方になるのか。そのかさは閉じてある。ごみ捨て場の壁、パンプスの上に立てかけてある。小降りの頃は雨避けになっていただろうが、この本降りではなににもならない。

 かさはビニールがさだ。安そうな細い骨、よくみると新しそうだ、もう開けないだろうけど。



 私はうろうろと雨の音を聞きながらお散歩。飽きたらカフェに行こうと思っていた。私はきっとこんなことがあったんじゃないかなと空想する。


 パンプスを脱いだ女と傘を折った男は付き合っていた。別れ際パンプスと傘で喧嘩しあった。これで謎は解けたわ!



「いや僕は違うと思うな」

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