ダンジョンと母

バブみ道日丿宮組

お題:彼が愛したダンジョン 制限時間:15分

ダンジョンと母

 ダンジョン作成の基本は、地道。

 触手トラップがあったり、針天井があったり、大岩が転がってくる定番はもちろんのこと。サキュバスによる性接触も、オークによるレイプも欠かせない。同士討ちトラップも捨てがたい。

 負のダメージは、ダンジョンを構成してるコアクリスタルのエネルギーに全て還元される。つまりは配置したトラップのエネルギーをそのまま回復することができる。

 トラップは半永久的に使えるわけではなく、劣化、体液による腐敗などで定期的に変えなくてはいけない。掃除ももちろんエネルギーを消費して行うため、保有数はあまり変化がない。

 死のエネルギーは性行為よりもはるかな輝かしい色合いを持つが、生物は蘇ったりはしない。

 当然ながらトラップで死んでしまうとそれだけで終わってしまう。そのため、最近は即死トラップは外して、性トラップばかりを配置してる。これならば、半永久的にエネルギーを取得できる。

 やりすぎると、快楽地獄に落ちて、あまり入らなくなるがダンジョンにくる者たちは頑丈だ。魔王を倒す、聖女を取り戻す、なんとなく。理由は様々だがそこに確固たる信念が感じる。

 とはいえ、魔王であった彼はもういない。

 今は私と彼の転生体である赤ん坊がそれを運営してる。

「……これでよしと」

 配置の再設定が完了した。

 あとは夜に再確認すれば、不備は起こらないだろう。

「ごめんね。ママ、お仕事してたから」

 えんえんと泣いてた我が子であり、彼を抱く。

 いつ彼の精神が転生してくるかはわからない。

『そう遠くないうちに』

 それが重症を負った彼の遺言だった。

 しばらくして、妊娠してることを理解すると、彼の作ったダンジョンにベビールームができてたことにびっくりした。

 そこで彼は転生して、赤ん坊に戻ってくることと、母親としての愛を感じてほしいとのメッセージがあった。

 ベビールームには、サキュバスやら、オークの執事でおり、私がダンジョン作成に勤しんでる時は変わりに赤ん坊を見てもらってる。

 かつての主の赤ん坊ということもあって、顔にいつも慎重さを持ってるのは、愛らしく思う。

「いつか……また」

 彼が帰ってくるそれまではこうして母親という役割を体験できる。赤ん坊を作れないはずの私が母親になれるなんてね……。

 魔術は不思議だ。

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ダンジョンと母 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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