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「"ジン"、第二フェーズに入ってくれ」"ハル"さんからの電話だった。「第一フェーズは大成功だったからな。このまま第二フェーズも成功を期待しているよ」


 つくば市、高エネルギー加速器研究機構、防衛省分室。

 ここは本来は文科省の施設のため、外様の俺たちはこの分室に押し込められている。とは言え建物を一つ丸々もらえたので広さは必要十分だし、設備にも何の問題もない。


「了解しました」


 俺は応えて受話器を置くと、画面に映されている、米軍から提供された地図に視線を戻す。


 もはや米国は日本に核ミサイルが撃ち込まれようが、何もする気はない。だが、一応同盟国として、それなりに協力はしてくれる。その一つがこれだった。


 某国の核ミサイル基地をリストアップした、地図。さらにそれに、米国のスパイ衛星が撮影した映像を重ね合わせる。


 俺をそれを見ながら、次の目標を定める。核ミサイルの保管庫だ。これまでに得られた情報を統合した結果、その位置はほぼ判明していた。点在するすべての発射基地からそう遠くない位置にある岩山。それに側面から横穴を掘って作った保管庫に、その国が保有する核兵器がほぼ全て収められていた。確かにここなら、核爆弾が直撃したとしても分厚い岩盤はびくともしないだろう。


 だが。


 俺の研究の下に開発されたこの新兵器ならば、そんなものは何の妨げにもならない。


 ニュートリノ砲。別名、νニューキャノン。こいつは超高エネルギーの大量のニュートリノを、目標に向かって発射する。


 ニュートリノは質量がほとんどゼロで電荷も持たない素粒子だ。貫通性が非常に高い。それは地球ですらも光の速さで余裕で貫いてしまう。


 νキャノンが発射するニュートリノの生成過程はかなりややこしい。まず、水素をイオン化し加速して金属に衝突させることでπ中間子パイオンを大量に生成する。マイナスの電荷を持ったパイオンはμ粒子ミューオンと反μニュートリノに崩壊する。ミューオンは軽粒子レプトン(強い相互作用をしない粒子)の一種で、これはさらに電子と反電子ニュートリノとμニュートリノに崩壊する。νキャノンはミューオンを高エネルギーで加速し、その崩壊で生成した高エネルギーのニュートリノを目標に向かって発射するのである。


 こうして発射されたニュートリノは、地球内部を進んでいくうちにそれを構成する原子と相互作用して、ハドロンシャワーと呼ばれる大量の高エネルギーのハドロン(強い相互作用を行う粒子)を作り出す。このハドロンシャワーは最終的にはほぼ全て中性子となり、その中性子が核弾頭を貫くことで、弾頭を未熟爆発させてしまうのだ。そう、この未熟爆発というヤツが、俺たちのプロジェクトの肝なのである。いったいどういうものなのか。


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