第2話 無論OK

夏希さんに出会った翌日、学校では東京からの来た美女転校生の話題でもちきりであった。

クラスメートの男女達が夏希さんの席の周りを取り囲んで、何やらたくさん話しかけられているようであった。


田舎の高校である青原高校、通称「青高あおこう」に転校生がやって来るなんてとても珍しい出来事であった。

東京からの転校生なんて、田舎者であるここの学生からは嫌われてしまいそうであったが、そんな心配は全くいらなそうだ。


その日の帰りいつも通り翔太と正門を抜けると、前方には夏希さんとお話をする青高三大美女がいた。

これで青高の四皇よんこうが完成だ。ただの学生の一人にすぎない俺には、学校の目の保養が一人増えた、そんな印象であった。


家に着いた俺は母さんに転校生の話をした。すると母さんはこんなことを言った。

「ああ橘さんちね、今日のお昼に親御さんから挨拶が来て驚いたわよ。」


「__ん?」

普通に意味がわからない俺。


「挨拶って、クラスメートの家全部回ってるわけじゃあるまいし。」


「あら、知らないの?橘さんちはちょうどうちと向かい合わせのお家よ。」


「はえぇ!?!?」

今年一驚いたのと同時に、今年一嬉しい瞬間であった。


「今度から一緒に帰ってきなよ」

台所で料理をしながら話す母さんであったが、ニヤニヤしながら話しているのは顔を見なくても分かった。


「俺みたいな地味人間と一緒に帰る奴なんて相当な地味人間しかいねーわい」

__すまん翔太。


家から隣の町にある青高まではバスでの登下校だが、その時間夏希さんと一緒にだなんて恐れ多い気がしてならなかった。


翌日朝


眠い目を擦りながら馬鹿みたいにあくびをしていると、


「おはよう伊吹くん!お父さんから家が向かい合わせだって聞いて驚いちゃった!」

眠気が一気に吹き飛んだ。いや、むしろまだ寝ているのかと錯覚を起こすようだ。


「あ、お、おはようございます。本当に家そこだったんですね。」

今日も今日とてキモイ挨拶をぶち上げた俺。


「そうなの!」

楽しそうに話す夏希さんは、とても素敵であった。


「今日から一緒に学校行こうよ!」


「えぇ!?俺なんかとでいいの!?」

告白されたかのような返事になってしまった。


「もちろんいいに決まってるじゃん!」

夢のようなお誘いに、無論OKした。


俺らの住むここは矢吹町やぶきちょうというところで、翔太が住むのが二つ進んだ先の借又かりまたという停車駅だ。


借又に着くと、馬鹿みたいにあくびをした翔太がバスに乗り込んできた。


「あれ、夏希ちゃんじゃん!」

こいつは俺よりはコミュニケーション能力はあるようだ。少し羨ましい。


「夏希ちゃんです!」


いちいち可愛い夏希さんと過ごす、かけがえのない一夏が始まった。


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