案外自分が一番自分を知らない

意外な過去を知ったものの、彼女は特段変わらず接してくる。

「八雲さん何してるんですか?早く曲作りましょうよ」

「あーはい」


そして彼女との曲作りは何日も続いた。

正直僕もここまで続くとは思わなかった。

スランプで曲が書けなくなっていたのに、どうしてか彼女との一緒に曲を作っているとアイディアが浮かんでくる。

僕は彼女と別れた後も、スタジオへと篭って曲を書き続けていた。

数曲描き終えるとバンドメンバーへ共有した。

歌詞については僕が書くこともあれば、他のメンバーが書くこともある。

今回1曲は自分で歌詞を入れたが、他の曲については他のメンバーで誰の歌詞が採用されることになるか。少し楽しみだった。

いつもと曲調が違うから驚かれるだろうか。なんて考えていると早速メンバーからメッセージが届いた。

「蓮さんなんすかこの曲(‘ロ’(‘ロ’(‘ロ’(‘ロ’ )!!!サイコーっすପ(⑅ˊᵕˋ⑅)ଓ俺気合い入れて歌詞書くんでー!!」

「琉。顔文字多すぎ。八雲今回は僕が最高の歌詞を描く」

「琉も京もやる気満々だね〜俺も頑張っちゃおうー」

「前回も零さんの歌詞だったじゃないっすか。次は順番的に俺っす\\٩(๑`^´๑)۶//」

「琉は単調だから仕方ない。言葉をもっと学んでこい」

「蓮おかえり」

「蓮さんおかえりっす₍₍ ◝(●˙꒳˙●)◜ ₎₎」

「八雲おかえり」

久しぶりに動いたグループチャットは僕を責める言葉は1mmもなく、優しい言葉で埋め尽くされた。

「ごめん」

僕は待たせていたことを改めて謝罪した。

琉は人が親指を突き立てたスタンプを押してきた。

「あっこら琉。俺たちのスタンプ勝手に使うな」

俺達??

「このスタンプうちのグループのスタンプっす(*˙˘˙*)俺が作りました」

「はいはい琉は本当に偉いね〜」

「まぁ零の知り合いに絵を似せてもらったんだけどな」

「もぉーそう言うことはいいじゃないっすか\\٩(๑`^´๑)۶//蓮さんにスタンプ送っておくので使ってくださいねー(๑• •๑)♡」

「俺は今から歌詞描いてくるからまたな蓮」

「僕も描いてくる。八雲は休息しているといい」

「俺もー!またね蓮さん٩( ‘ω’ )و」

嵐のようなメンバー達だ。僕は琉が作ったスタンプとやらを見てみる。

それぞれのメンバーの特徴を捉えたスタンプは口調や表情も個人に寄せていた。

僕はこういう表情をしているのか。

僕は携帯を閉じるとまた曲作りに没頭した。

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