意外な過去

僕は気を取り直して2番のスタジオの扉を開ける。

彼女がいることを確認すると、僕は遅刻したことを謝罪した。

「ははは、大丈夫ですよ。蓮さんと連絡取れるまで、お友達の方とお話ししてましたので」

「あっ……そうなんだ……」

琉はともかく、伊織は素性が知れない人とは話すイメージがなかったので意外だった。

「蓮さん今日は昨日の続きからでよろしいでしょうか」

彼女はノートを見返しながら、こちらを見た。

「あぁ」

僕はギターを手に持ち、椅子を彼女の近くまで持っていくと、昨日の続きを始めた。


「ここはタララーって感じで、こっちはタタッタタッって感じだと、合いますか?」

「あ、うーんそれでもいいと思うけど、こっちはダララランっていうのとかも合うと思う」

僕はギターで演奏してどうかと伝える。

「なるほど!!それも合いそうですね。一回最初から弾いてみます」

そう言って彼女は、ピアノを奏でた。


「おおぉぉぉぉ。蓮さんいいです!!かっこいいです」

彼女はとっても嬉しそうに笑った。

彼女は本当に今まで曲作ったことがないのだろうか?僕はアドバイスをしてはいるものの、彼女はほぼ一人で曲を作っている。

というか、作りたいメロディが見えているようだ。

「あの?本当に曲作ったことないんですか?」

僕は疑問をぶつけてみる。

彼女は一瞬逡巡した後、ゆっくりと答えた。

「……はい。……私……ずっと病院で生活をしていたので……」

僕はまずいことを聞いたのだろうかと焦った。

「あ、無理に話さなくて大丈夫だから」

彼女は微笑むと「いえ、蓮さんに時間を頂いているので、いつか話さなきゃと思っていたんです」と答えた。

「あっ!!でも今は作曲の時間なので、この話はまた後日しましょう」

彼女は作曲作曲だと呟きながら、ピアノで次の音を探した。

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