彼女のメロディ
カフェの席に腰を下ろすと「何飲む?」とメニュー表を渡してきた。
僕はメニューを見ず「水で」というと、目の前にいる少女は大笑いしていた。
店員に飲み物を注文した彼女は興奮冷めやらぬ感じで話を始めた。
「どうだった?楽しかったでしょ?!ってかお兄さんめちゃくちゃ歌上手いし、バラード曲すごいね〜グワーンてきてぐさっとする感じ。一瞬時を忘れちゃったよー」
彼女はハッとした表情をすると、自己紹介してなかったね。と言って自己紹介を始めた。
「
なるほど。通りで、広場の周辺で彼女に話しかける人が多いわけだ。
「えっと、、、僕は
「蓮さんかー蓮さんはどうして音楽をしてるの?」
どうしてか。僕の両親は音楽関係の仕事をしてきたから、音楽が身近にあった。だから大層な理由はないけど音楽以外の選択肢はなかった。でも改めて聞かれるとなんて答えればいいか悩ましい。
「…小さい頃から音楽に囲まれて生きてきたから」
僕は無難な解答をした。と思う。
「そっかぁ。弾き語りしてる時にの蓮さんとても楽しそうだったもんね」
彼女はとても嬉しそうな表情をする。
「楽しそう……か……」
「えっ??楽しくなかった??いやそんなはずはない……だってあの時」
彼女は一人でぶつぶつ何かを言い始めた。
しばらくして彼女は大変申し訳なさそうな表情をした。
「えーっともしかして歌いたくなかったですか………無理矢理広場連れていってしまったならすいません」
「まぁまぁもう過ぎた事ですし、顔を上げてください」
人前で弾き語りをしたのは久しぶりで、正直歌えていただろうか。そこが心配だ。もし零に聞かれていたら怒られているかもしれないな。なんて考える。
「あの?蓮さんさえ良ければまた、あの広場で歌いませんか?」
すぐには答えられないでいると彼女は続けた。
「あの無理にとかではないので、気が向いたら言ってくださいね」
「……あぁ」
最近スランプで曲が上手く描けない。
「……」
あれ、なんだ。記憶が混ざる。僕は……。何かを思い出しかけたが、彼女が話しかけてきた。
「あの……大変烏滸がましいとは思うんですけど……私に曲作りを教えてくれませんか」
僕は断ろうかと彼女を見る。
彼女は急に立ち上がる。
「今からあそこのピアノを弾くので、私の曲を聴いて率直に感想頂けますか」
彼女の視線の先を置くとアップライトピアノがカフェの端の方に置かれていた。
「てんちょーさんピアノ借りますね」
店主に声をかけると彼女はスタスタとピアノの方まで歩いて行ってしまった……。断る前に先手を取られてしまったようだ。
彼女は椅子を調整し、腰掛けるとピアノを奏で始めた。
〜〜♪
店中に彼女のメロディが響き渡った。
真っ直ぐそうな彼女をそのまま表したようなメロディ。
とても楽しそうにピアノを弾くな。
彼女も気分が乗ってきたのか、途中で曲を変え歌い出した。
彼女をみていると、澱んでいた気持ちが掬われていくような気がする。
あぁ、久しぶりに音楽を楽しみたいな。
僕はギターを取り出し、彼女の近くに行くと、彼女のピアノに合わせて演奏を始めた。
人と演奏するのは久しぶりだった。
僕はバンドメンバーがいるが、最近僕が曲を作れなくなったせいで休ませてもらっていた。
どうして曲が描けなくなったのか、原因がわからない。
今までは自然と湧いてきた。だからどうしたらいいかわからないのだ。
バンドメンバーの一人であり、幼馴染の零は焦らなくてもいいと言ってくれているが、他のメンバーとは少し揉めた。
しばらく彼女と演奏した後、彼女に「楽しそうですね」と言われた。
僕は久しぶりに音楽を純粋に楽しんでいたようだ。
彼女はまた僕に「曲教えてくれる気になりました」と聴いてきた。
僕は「あぁ」と答えると彼女は「やったぁー!!」と満面の笑みで喜んだ。
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