第6話 ハチとコノ
ハチは、私の情操教育のために、両親が譲渡会でもらってきた猫だ。もともとは犬が良いと思っていたらしいけれど、譲渡会に子犬がいなかったらしい。名前は、八月からきている。八月にもらってきたからだ。
「大人の犬だと、あんた、負けるでしょう」
両親は、学校に行かず日がな一日家で本を読んでいる私は、非力だと思っていた。実際非力だった。今でもそうだけれど、生後3か月だったハチはよく暴れ、ハチと遊ぶことで私も少しは運動をするようになった。
最初の頃はすぐに息切れがしたけれど、だんだん30分以上続けて遊んでも平気になった。ハチのほうが疲れて、床に寝そべるようになった。猫は、寝そべると案外長い。ハチが床に伸びたら、遊びはおしまいのサインだ。けれど、ハチはまたすぐに遊びたがった。
それから1か月後、気まぐれで散歩に行った雨の日に、たまたまコノを見つけた。コノは1匹で震えていた。あとから調べたところ、親猫が近くにいたかもしれないから、私がしたことは間違いだったようだ。でも、そのときの私は親猫が近くにいるかもなんて思いもせず、すぐにコノを抱き上げて家に連れて帰った。
名前は、ハチと同じく家に来た月から決めた。9は「ここのつ」と言うから、コノだ。
インターネットで調べたところ、病気や虫を持っている可能性もあるから、しばらくはケージに入れて別室で飼ったほうがいいと書いてあったけれど、ケージもないし2部屋しかない。活動的なハチは、キッチン付きのリビングにも寝室にも出入りするし、それを止めるのは難しかった。
どうしようもなかったので同じ家で飼われることになった2匹は、最初こそすごい音を出して威嚇し合ったけれど、1か月ほどで慣れた。
2か月後、うっかり私がハチのお薬を忘れて、コノにだけお薬を垂らしたあとで、ハチの便から回虫が出てきた。ものすごくびっくりした。
祖父母がアパートを訪ねてきたときに筆談でお願いして、かかりつけの動物病院に連れて行ってもらった。
飼った時点で駆虫が済んでいたハチに、今更虫が見つかることは考えにくく、おそらくコノからもらったのだろうと言われた。2匹ともこれからワクチンと避妊手術が必要ですと言われた。費用は全部祖父母が出して、ハチとコノは晴れて健康な体になって、順調に大きくなっていった。
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