第14話 パターン14

「オリコー! 貴様との婚約は破棄じゃあ~!」


 今日は学園の卒業式の日。


 卒業パーティーに臨む生徒達の、浮かれた気分を台無しにするような大声を上げたのは、この国の第2王子アホヤネンである。その傍らには最近アホヤネンと噂になっている、バッカーナ男爵令嬢の姿があった。


「婚約破棄ですか。それは構いませんが、本当によろしいんですか?」


 涼しい顔でそう答えたのは、アホヤネンの婚約者に当たるオリコー公爵令嬢である。


「当然だ! 貴様は俺様とバッカーナが仲良くしているのを見て、嫉妬に駆られてこのバッカーナを虐めたな! まず、バッカーナの教科書を全て破り捨てた! 次にバッカーナを噴水に突き落とした! 更にバッカーナを階段から突き落とした! 更に更に...」


「あぁ、もうその辺で結構です。理由を聞いてる訳じゃありませんから」


「な、なんだとぉ!? それはどういう意味だ!?」


 いきり立つアホヤネンの言葉を遮って、オリコーがバッカーナに話し掛ける。


「そちらのあなた」


「えっ!?、わ、私!?」


「私と殿下が婚約破棄したら、殿下はご自分の公務をあなたに押し付けるようになりますよ? 私の時みたいに。あなたはそれを熟すことが出来ますか?」


「そ、それは...」


 バッカーナが自信無さそうな顔をする。


「殿下の代わりに閣議に出席して、大臣や官僚達とやり合う覚悟はありますか? 殿下の机の上に山と積まれた書類と格闘する気はありますか? それから...」


「ううう...」


 いつまでも続く公務の数々にバッカーナは段々と萎れて行った。


「それと外国の要人を接待する時に、あなたは通訳出来るんですか? 自慢じゃありませんが私は五か国語を話せます。自国の言葉も怪しい殿下とは違いますので」


「「 びでぶっ! 」」


 最後はアホヤネンとバッカーナが二人揃って仲良く玉砕した。


「それでもよろしいなら謹んで婚約破棄をお受け致しますわ」


 二人はその場に崩れ落ちた。


「では皆様ご機嫌よう」


 オリコーは軽やかな足取りでその場を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おバカな婚約破棄のあれやこれや 真理亜 @maria-mina

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ