第13話 パターン13
「オリコー! 貴様との婚約は破棄じゃあ~!」
今日は学園の卒業式の日。
卒業パーティーに臨む生徒達の、浮かれた気分を台無しにするような大声を上げたのは、この国の第2王子アホヤネンである。その傍らには最近アホヤネンと噂になっている、バッカーナ男爵令嬢の姿があった。
「婚約破棄ですか。それは構いませんが、本当によろしいんですか?」
涼しい顔でそう答えたのは、アホヤネンの婚約者に当たるオリコー公爵令嬢である。
「当然だ! 貴様は俺様とバッカーナが仲良くしているのを見て、嫉妬に駆られてこのバッカーナを虐めたな! まず、バッカーナの教科書を全て破り捨てた! 次にバッカーナを噴水に突き落とした! 更にバッカーナを階段から突き落とした! 更に更に...」
「あぁ、もうその辺で結構です。理由を聞いてる訳じゃありませんから」
「な、なんだとぉ!? それはどういう意味だ!?」
いきり立つアホヤネンの言葉を遮ってオリコーが続ける。
「私と婚約破棄したら、殿下はご自分の公務を私に押し付けることは出来なくなりますよ? それで本当にいいんですか? とお聞きしたんです」
「ぬなぁっ!?」
アホヤネンが間の抜けた声を発する。
「これからは『ガキは嫌いだ!』とか言って孤児院の慰問をサボッたり『面倒臭ぇ!』とか言って貧民街での炊き出しをすっぽかしたり出来なくなりますよ?」
「くぎゅう!」
またもやアホヤネンが奇声を発する。
「それと外国の要人を接待する時に、今後は誰も通訳してくれませんよ? そちらの方は何ヵ国語マスターしてるのか知りませんけど、私のように最低でも五ヵ国語くらいは話せないと話になりませんよ?」
「「 びでぶっ! 」」
最後はアホヤネンとバッカーナが二人揃って仲良く玉砕した。
「それでもよろしいなら謹んで婚約破棄をお受け致しますわ」
二人はその場に崩れ落ちた。
「では皆様ご機嫌よう」
オリコーは軽やかな足取りでその場を後にした。
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