第12話 パターン12


「オリコー! 貴様との婚約は破棄じゃあ~!」


 今日は学園の卒業式の日。


 卒業パーティーに臨む生徒達の、浮かれた気分を台無しにするような大声を上げたのは、この国の第2王子アホヤネンである。その傍らには最近アホヤネンと噂になっている、バッカーナ男爵令嬢の姿があった。


「......」

 

 困惑した様子で唖然としているのは、たった今婚約破棄を突き付けられたオリコー公爵令嬢である。


「貴様は俺様とバッカーナが仲良くしているのを見て、嫉妬に駆られてこのバッカーナを虐めたな! まず、バッカーナの教科書を全て破り捨てた! 次にバッカーナを噴水に突き落とした! 更にバッカーナを階段から突き落とした! 更に更に...」


「あぁん! てめえ何ほざいてやがんだごらぁ! しまいにゃ泣かすぞごらぁ!」


 今まで聞いたことも無いようなドスの効いた声でオリコーに凄まれ、アホヤネンは慌てた。


「お、おいっ!? ど、どうした!? い、いきなり何言い出すんだ!?」


「てめえがふざけた事をほざいてるからだろうがごらぁ! 舐めとんのかごらぁ! 寝言は寝て言えやごらぁ! そこの女狐にたふらかされやがってごらぁ! 恥ずかしいと思わねぇのかごらぁ!」


 オリコーの勢いは止まらない。


「ちょ、ちょっと! な、なに言ってんのよ! 人聞きの悪いこと言わないでよね! 大体誰が女狐だぁ!」


 バッカーナが慌てて否定する。


「あぁん! 女狐を女狐って言って何が悪いんだごらぁ! アタイを誰だと思ってんだごらぁ!」


「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」


 オリコーに凄まれてバッカーナが涙目になった。


「お、おいっ! や、止めろ! バッカーナが怖がってるだろ!」


 アホヤネンが割って入るが、それが更にオリコーの怒りに油を注ぐことになった。


「てめえらぁ! もう勘弁ならねぇ! そこに正座しやがれ!」


「な、なにをいきなり...」


「正座ぁ!」


「は、はいぃ...」


 アホヤネンとバッカーナは大人しく従った。バッカーナは既に泣いている。


「婚約破棄だとぉ! 上等だごらぁ! てめえなんざこっちから願い下げだごらぁ! だかな、人を冤罪で貶めようとする根性が気に食わねぇ! ハネたら刺すぞごらぁ! てめえらはアタイが帰った後も一時間正座しとけやごらぁ!」


 そう言ってオリコーは足音荒く出て行った。


 後には正座しているアホヤネンとバッカーナが残されていた。


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