第11話 パターン11

「オリコー! 貴様との婚約は破棄じゃあ~!」


 今日は学園の卒業式の日。


 卒業パーティーに臨む生徒達の、浮かれた気分を台無しにするような大声を上げたのは、この国の第2王子アホヤネンである。その傍らには最近アホヤネンと噂になっている、バッカーナ男爵令嬢の姿があった。


「......」

 

 困惑した様子で唖然としているのは、たった今婚約破棄を突き付けられたオリコー公爵令嬢である。


「貴様は俺様とバッカーナが仲良くしているのを見て、嫉妬に駆られてこのバッカーナを虐めたな! まず、バッカーナの教科書を全て破り捨てた! 次にバッカーナを噴水に突き落とした! 更にバッカーナを階段から突き落とした! 更に更に...」


「びぃえええん! アタシやってないもん! ウソだもん! びぃえええん!」


「お、おいっ!? ど、どうした!? な、なにも泣くことないだろ!?」


 いきなり火が付いたように泣き出したオリコーを、アホヤネンは慌てて宥める。


「びぃえええん! アタシじゃないもん! そこの女狐がウソ吐いてんだもん! びぃえええん !」


「ちょ、ちょっと! な、なに言ってんのよ! 人聞きの悪いこと言わないでよね! 大体誰が女狐だぁ!」


 バッカーナが慌てて否定する。だがオリコーは幼子のように泣き続けるだけ。


「お、おい! とにかく落ち着け! いい加減泣き止め! いい子だから! な?」


 アホヤネンがどれだけ宥めてもオリコーは泣き止まなかった。


「あ~あ、泣~かした~ 泣~かした~」「い~けないんだ~ い~けないんだ~」「お母さんに言ってやろ~」


 次第に会場中からそんな声が上がって、アホヤネンとバッカーナは窮地に立たされた。


「びぃえええん! 殿下なんか殿下なんか大っ嫌いだよ~! びぃえええん!」


 オリコーは泣きながら走って行ってしまった。


 取り残されたアホヤネンとバッカーナは、なんとも気不味い雰囲気の中で立ち尽くしていた。


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