数年後
「今日は猪を狩ってきたよ。猪の血抜きはもう済ませておいたし、今日は猪の肉を使った鍋にしようよ。」
「そろそろ食べ頃な白菜や人参があるし、今日は猪鍋にしましょうか。」
「猪鍋好きなんだよね。温かくてさーーー」
「温かくて?」
「ローズにフーフしながら食べさせて貰えるから。」
「ーーん!!もう、そんなこと言うんならフーフしてあげませんよ?」
「もしかして、フーフして欲しかった?それじゃあ、今度は僕がフーフしてあげるよ。」
「そういうことじゃないですよ///」
猪を肩に担いだ嬉しそうなアレンと、アレンの言葉に顔を紅くさせているローズ。その姿は#王子様__・__#と#貴族の令嬢__・__#だった人物には見えなく庶民的だが、とても幸せそうな夫婦に見える。彼等の幸せそうな空間に、黒色の毛を纏った一匹の狼が駆けつける。
「ガウッ!ガウッ!」
「こらこら、そんなに興奮するなって。ちゃんと、クロにも食べさせてあげるから。いくら肉が好きだからって、この肉を今食べたら流石に怒るぞ。クロの場合、限度を決めなくちゃ全て食べちゃうんだから。」
「お肉を鍋にしたものを後でクロにも渡すから、落ち着いて。クロの嫌いな野菜は入れないであげるから。ほらほら、いい子いい子。」
「ガウッ~」
「ちょっとクロ撫でられ過ぎじゃないか?猪を狩ってきた僕が本当は撫でられるべきなのに。いっちょやるか?」
「ガウッ?」
「こらこら。クロと争わなくても、好きなだけ撫でてあげますよ。ほらほら。頑張りましたね~」
「ん~」
首を傾げているクロに、ローズに撫でられて嬉しそうなアレンに、自分に撫でられて嬉しそうにしているアレンを見て、母性を感じているローズ。クロは彼等の元に色んな時間帯に現れる黒色の狼で、森から彼等の元に来ない日もあれば、ずっといる日もある。そんな時々訪れるクロに、ローズとアレンは料理を分けて、一緒にクロとご飯を食べていたりする。彼等がここに来てからはもう当たり前の光景だったが、決して崩れるようなことはない幸せがそこにはあった。
「ん?そういえば、クロが何かの紙を口に挟んでないか?」
「確かに、何か挟んでますね。クロ?ちょっと口を開けて貰ってもいいですか?」
「ガウッガウッ」
「えーっと? 何々? ーーー!!」
「ーーよりによって彼奴の紙かよ…………僕達のこと今でも探してるとかヤバイだろ。もうあれから三年は経ったよな?」
大きく紙に映っている僕とローズの顔に、署名されているラエアという字に嫌気がする。
目が覚めたローズと抱き締め合った後、僕は多少の金銭を持ちながら馬に乗ってローズと共に駆け落ちした。駆け落ちした後、最初は街で普通に仕事をしたりしてお金を稼ぎながらローズと生活していたが、この紙のように僕とローズを探す紙が配られ始め、僕とローズは街では生活が出来なくなり、今では家を森の中に建ててローズと生活している。
そろそろ彼奴のほとぼりも冷めて、街でも生活出来るかなと思っていた頃。 三年近く経ってもほとぼりの冷めていないラエアに、僕とローズはため息を大きくついた。
「そういえば、ローズ。あの紙を見たことだから気が重いと思うけど、猪を狩っている最中に、何やらこんなのを見つけたんだ。」
「ん?こんなのって何ですか? ってーーー」
「ローズには今まで誕生日でもぬいぐるみとかしか渡してこなかったから、今年の誕生日はちゃんとした指輪をーーーと思っていたんだけど、偶然拾っちゃってさ。拾った割にはいい指輪じゃない?紫色だから、ローズの綺麗な赤色の髪と透き通った水色の瞳にとても似合っているしーーー」
「もう//バカですか貴方は。」
「バカって何だよバカって。僕はアレンだよ?」
「ふふっ。とっても嬉しいです……どうか、指に入れてくれませんか?」
「も、勿論。い、入れさせて貰うよ。」
顔を真っ赤に染めながら、拾ってきたと言う指輪を震わせながらローズの左手の薬指に指輪を入れるアレン。ローズは、「買ってきたんだから、正直に買ってきた言えば良いのに」と思いながら、アレンの手にアレンのように顔を紅く染めながら視線を合わせる。
顔を紅く染めていく二人に、クロは何が起こっているのか分からないのか、首を傾げた。
「左手の薬指に入れちゃったけど、良かったんだよね?」
「当たり前ですよ?……逆に、左手の薬指に入れてなかったら、入れるまで入れさせてましたから。」
「……サイズもぴったりあってるなんて、凄い偶然だね。……凄く指輪似合ってるよ。」
「……やっぱり、アレンはバカです/// バカなアレンにはこうです。」
「ーん!!」
アレンの唇に、そっと唇を合わせるローズ。
唇をくっつけてきたローズをアレンは、そっと抱き締めながら引き寄せる。
アレンとローズは幸せそうに、そのままずっと重なり合う。
幸せそうな二人に、クロも幸せそうに顔を緩めた。
最低な私は、元婚約者を今日も騙します 狼狼3 @rowrow3
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