第11話
それは背の低い少女だった――中性的で少年にも見えたが、それにしては声が高すぎるとレオンは判断したのだ。それからしばらく少女は何も言わずにじっと見ているだけだったので、半ば無視して肉塊を潰していると、彼女は独白するかのように小さな、しかし涼やかで良く通る声で喋り続けた。
「覚悟してる、決然たる意志を持ってる系の人でないと英雄にはなれないし、社会的構造を変えることも無論できはしないけど、それだけではなく魂魄に黄金の炎を灯す必要があってそれを見ることのできる人は少なく、私がその一人であることは明白な事実」
分かりづらい言い回しだが、どうやら少女は自らの能力を誇示しているらしかった。
〈黄金の炎〉とは、何らかの比喩なのだろうか?
「私はエレノア・キッド、このキッドはDが二つのKIDDだけどDが一つの
少女は無表情のまま、異様な憎悪を表した。
「じゃあキッド、いったい僕に何の用なんだい、要点だけを言ってくれないか」
レオンはキッドにこの場から立ち去って欲しかったので、彼女がたった今アピールした、Dが一つの「KID」で呼ばれることを嫌悪しているという点を活かし、彼女の機嫌を取るため二つ付けて呼んだ。目論みはうまくいったのか分からないが、彼女はごく明快にそれを答えた。
「私はバカンから修行のためにこの地に来ている。より高難易度の迷宮に挑むためにパーティを組む必要がある。その一員となる、魂魄に黄金の炎が灯っている人を探しており、あなたが魂魄に〈黄金の炎〉を持っているという点に気づきパーティに誘おうとしているところ」
バカンはイーグロン大陸の六王国のうち、もっとも栄えている国だ。大陸中央に位置するがゆえに他の五国との重要な交易点であり、東の内海に大きく突き出た半島は、砂漠に覆われた東方大陸の帝国、コスとの中継地点だ。あるいはキッドは、バカンの大商人の娘かなにかで、家出同然にモーンガルドへ飛び出して来たのではないだろうか。
レオンは答える、
「僕は君の夢に付き合うことはできない、僕が抱いている野望は、英雄になるのではなく金持ちになるのでもない、堕落だ。僕は堕落者としての生活を送るため、その道を模索している、だから何らかの建設的なプランに従事することはできない。それは堕落とは正反対の道だからさ」
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