少年はもう一人の部下を得る ③

それからいくつもの『父親』に関する質問をしたが、カラ自身が覚えていることは一つもなく、母親もまったく口に出したことが無いことが繰り返されただけだった。

しかしそれ以外で言えば、貴族があまり立ち入らない救貧院のある庶民の街に出入りする旅商人も多いらしく、まあまったく王国語が通じないとか顔立ちや肌の色がまったく違うというのでなければ、隣国の者だろうと気にすることなく接するということである。

つまりカラだけでなく、妹や同じ救貧院で産まれた子供たちの中には、知らないうちに異国の血を引いている者がいるかもしれない。

ターランド伯爵家が与えられた領地内では他国の人間が勝手をしないように領政をいてはいるが、他領に関してどのような政策を行っているかまでは完全に把握できているわけではなかった。

また王都に関しても軍属しているため関門の流出入の情報は上がってくるが、それを管理するのはまた別の部署や貴族家が取り仕切っているため、ラウドが独自に部下を動かして得ているのでタイムラグが発生することもある。

だが──

「……城の中が主な行動範囲だとは思うが、特に接触してくるような者はいないか?」

「はい。アーウェン様とご一緒以外でも鍛練に参加させていただいておりますが、個人的に遊びに誘ってくださるという方は……」

「それはまあ……あまり良くないことではあるが、年齢が離れすぎているということもあるだろう」

義息子の従者ということであからさまに避けられているというよりも、この領都を護る軍兵の職についている者のほとんどは最年少でもロフェナより年上で、十五にも満たない少年では誘うにしても飯を食うか、鍛練ではなくともやはり運動をするぐらいしかない。

健康的な付き合いをするのは推奨するが、大人たちにはそれ以上のスキンシップを異性と好む場合もあり、さすがにそんな店にカラを連れ込むわけにもいかないだろう。

ひょっとしたら普段はそんな不道徳なことをしているかもしれないが、さすがに領主が新しい息子とその従者を連れて帰ってきているのに、わざわざ処罰の対象になることはない。

「そうだな……しかしそれならば、逆にカラに気を配ってほしい者がいる」

「は?」

ラウドが思い浮かべたのは、先程祖父から引き離して城に保護した少年である。

年齢的にはほぼカラと変わらないはずであり、また本人の言を信じるならば、カラと同じように子供同士のケンカなども経験しているだろうし、負け知らずでもあるはずだ。

カラだけでなくあの少年もアーウェンの身辺を固めるのであれば──旅立つ時に持たせるモノは何も物資だけとは限らない。



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