少年はもう一人の部下を得る ②
ラウドは王都にいる調査部門の者たちにサウラス男爵家ではなく、キャステ騎士爵家の家系を辿る指示を出した。
もちろんサウラス男爵が興るきっかけとなった祖父のさらに数代上の家系のことも、この城で調べられる限りのことを再度調査するつもりである。
しかし──
「禁書はここだけではなかったと思うが……」
「父からは何も……しかし、歴代の家令に伝わる書物すべてを閲覧する許可をもらいます。また領都の図書館内には領地に関する歴史書などもあったかと。他にも非閲覧の書物がないか、確認いたします」
ロフェナは一礼して空いたティーカップを受けとり、後ろに控えていた
「アーウェンの寝室は?」
「すでに整えてあります。晩餐はお一人になるかと存じますが」
「構わん。私の分を遅らせるように伝えるように」
「畏まりました」
軽々とアーウェンを抱きかかえたラウドのために扉を大きく開け、ロフェナは控えめに応答した。
眠り続けるアーウェンの頭を軽く撫で、子供部屋に設えられているソファに座ったラウドは、本来ならばアーウェンのそばに控えているはずのカラを正面に座らせた。
「君の父親についてだが」
「はい」
「覚えていることはあるか?」
「いえ」
カラと妹は歳が離れているが、父親が同じかどうかは知らない。
いつの間にか貧民院に住んでいて、そしていつの間にか妹が生まれた。
ひょっとしたら母は、あの施設に入る前から子供に言えないことで何とか生きていたのかもしれない──が、少なくとも母が父親について教えてくれたことはない。
「しかし君の髪色については」
「……特に問題になったことはありません」
確かに生まれつき黒っぽい髪だったが誰かに何かを指摘されたことはなく、知らないうちにかけられていた黒魔術が解かれた際にはごっそりと髪色が抜けて一時期銀色のような髪色だった。
今は何故か灰色よりも濃い色になってはいるが、茶色とはまた違う色で、本人は気にしていないがこの領都館に来た時には好奇の目があったのは承知している。
しかし現在では誰もそんなことを気にすることはなく普通に接してくれているから、今さら領主様にそんなことを聞かれる理由がわからない。
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