伯爵は言い分を聞く ①
さすがに領主様まで出てこられては、大人も子どもも口を閉ざしてしまう。
特に口を塞がれた少年たちが目を伏せきまり悪そうにしているのは、自分が何を言ったのか理解している証拠であり、それが養子とはいえ領主一族の者に向ける者ではなかったと後悔している顔だった。
ただしその反省がアーウェンに向かっているとは到底思えず、ラウドははぁ…と溜息をつく。
先ほどのアーウェンに対する罵りは子ども特有の短絡的な感情の発露だったのだろうが、それが思ったよりもまずい相手に見つかったという自分の運の悪さに対するものだろうと察せられた。
「我が息子となったとはいえ、誕生からこの地で育った者ではないこの子に忠誠を誓えというのは難しいだろう……だが、それを免罪符として見過ごすわけにはいかない。成人していないとはいえ、善悪の区別もつかぬほどの幼さとも思えぬな。今ほどの騒ぎに加担した者は年齢の大小に関わらず、後見人と共に城にくるように。後ほど召喚状をそなたらの家に発布する故、定められた日時に登城することを命ずる!」
高らかにラウド宣言すると、その場で手打ちになったり処罰されたりすることがなかったことに安堵する者や、ひと家族ごとに沙汰が言い渡されることを察して顔を青褪めさせる者と、反応は様々だ。
これが他の領地であれば、単純に『貴族に不愉快な思いをさせた』という理由だけでその場で切り殺されることだってあるだろう──だが、ターランド伯爵領ではそんなことは起きないし、起こさない。
それはラウドが領主の座を受け継ぐ前から、それこそ公国である頃からの規律であり、他国に合併されてもなお独立心を忘れたくないという先祖代々の教えの賜物でもある。
おかげでむやみな殺生はたとえ領民の間でも起こらず、しかしそれが領主一家に対するやや気安い態度で接する原因となっているとも言えない。
それが悪い方面で発揮されるというのならば、それはきちんと正さねばならないとあえてラウドは厳しい顔で言い渡した。
呼び出されたのは十人ばかりの子どもたちとその親だったが、面談は三日ほどに分けて行われた。
最初はエレノアに花を差し出した幼女とその姉、そしてその両親。
次に姉の友人である同い年の少女と両親。
その次も少女と両親。
翌日は少女たちと同い年の少年とその家族を立て続けに三組。
三日目には少年とその弟、そして面倒を見ているという叔父夫妻。
最後に会ったのが一番年上の少年と祖父だった。
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