少年は『城』を巡る ②

彼が手に持っていたのは、青い装丁で白い縁取りの厚くて大きい本だった。

「やあ、クレファー。それは星図鑑か」

「はい。ずいぶん珍しい物があると思いまして。これはぜひアーウェン様にお見せしたいと」

「見る目がある。よく気がついたな」

ラウドが頷き、アーウェンとエレノアを呼ぶ。

それと同時にロフェナを始めとする侍従がサッと動いて、すべての窓のカーテンを次々と締めていった。

「これは……」

「どうせなら初めから驚かせたい。その本を見つけたのは評価できるが、この仕掛けには気がついたかな?」

暗闇の中でラウドが笑う。

アーウェンは思わずエレノアと、そばを離れずに『ここにいます』と言うように背中に手を添えていてくれたカラに縋りついた。

「あーにーしゃまぁ……くらくてこわいよ……」

「だ、だいじょうぶ……のあ…だいじょうぶ……」

子供たちは何が起きるのかと互いの手をキュッと握り合う中、ラウドがクレファーに指示を出した。

「その本をテーブルに置き、どのページでもいいから開きたまえ」

「はっ…はい」

ガタンッゴトッといくつか音が立ったが、パラリと髪が捲れる音がすると、ふわりと闇が光った。

「うわぁ……」

「きれぇ……」

「すごい……」

本が光る。

だが──

「上をごらん」

ラウドのその声に、アーウェンとエレノア、カラと本を開いたクレファーも天井を仰ぎ見る。

「ほし……?」

夜にはまだ早い時間なのに、満天の星空が頭上に広がっていた。



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