フィルター越しの世界

 幼い頃からずっと頼られて生きていた。

何故なら僕は、赤と黄色のオッドアイだから。


「ほらあの子、目の色がそれぞれ違うわよ」

「気味が悪い。あっちに行きなさい」


色違いで何が悪い。偏見の目で見るのは凶悪なモンスターだ。

伸ばしっぱなしの髪の毛、ろくにくしも入れない。


 それから君も前髪を伸ばした。深くフードを被る。

外界と隔離するヘッドフォン、流れたのは僕が好きな音楽。


―神影君、下の名前って何だっけ?

―ふふ、いつか思い出すよ。


僕は微笑む。純粋無垢な君は世間を知らない。どこまでも僕を信じる。

ああ、本当に感謝しているよ。


 パラレルワールドって知ってるかい?

選択の数だけ違う宇宙が存在する。

どこかの宇宙に自分と同じ容姿の別の人間が存在する。

それでも君は、別の世界で「違う自分」として生きてみるかい?


 何度でも君と異世界へ。もう一人の僕に見つからないように。

ずっと向こうの別世界へ。しばらく戻れない。


「茶色の目をした僕」か…。

やれやれ、疲れるね。その世界までの道のりはとても長いんだ。

辿り着くまで何千、何万と宇宙を超えないと。

監視の目をすり抜けるのがどれだけ大変か。


りょう、君の顔なら何億回も見たよ。

あいにく文章でないと会話できないが、明るくておしゃべりな人だ。


『消滅を許可します。これは強制ではありません』


消滅?そんなことされたら困るなあ。でももう遅いと思うなあ。

「ははは。そんなに焦るからだよ」

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