遠い夏を見ていた

 「おかえりなさい」

懐かしい声に振り向く。そこには誰もいなかった。

見失った世界、懐かしい君。空気はとても綺麗でさ。


たくさんの水滴が集まり、一つの空間となる。

それは現の姿や思想を映す。心なしか、君も一緒に居るような気配。


思いを巡らせる中、顔を上げた。

そこに居るのは屈託のない笑顔の君。僕は言葉を失う。


「初めまして」


流れる雫はすぐには止まらない。そういうものなのだ。

全て知っているような表情だ。ああやっぱり、出会える世界は何度でも。


同じ時間の繰り返し、失敗を直す。そう思っていたって一歩ずつ。

今しかできないんだ、明日じゃ駄目だ。


下手くそ。どうしてだ。

待ってくれ、僕から離れないで。


一日、また一日。確実に夏から遠ざかる。

記憶のリセット、意味も解らない。

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