第5話
「~~~~っ」
姉さんは言葉にならない怒りの呻きかなんかそういう感じの音を立てて俯いてしまった。
……勝ったな。ああ。
これで落ち着いて宿題が出来るぞ。そう思った俺だったが、そうは問屋が卸さなかった。
姉さんは離れるどころかますます圧を強めて、お怒り気味の涙目で見上げて来たのだ。
正直に言って、俺は生まれておおよそ十八年、姉さんを異性として見たことは一度も無かった。
いや、おっぱいデッカ!みたいなグラビアアイドルと同レベル程度でなら全然無いとは言わないが、それは恋愛対象として存在するおっぱいではない。
ついでに言うとお風呂場でばったり!とか、うっかり手が!みたいなラッキースケベは一度も無い。無いのだ。世の諸兄が期待するほどにそういうイベントは起きないもんなのだ。いや俺だけかもしらんけど。
だからその、なんだ。
隣の弟クンが学校の先生に誘惑されたって話にちょっと嫉妬してお色気意地悪したら思った以上に恥ずかしかった上に思わぬ反撃まで受けてたじろぎながらもあとには引けなくなってしまって羞恥と意地の限界いっぱいいっぱいにもかかわらず更に一歩踏み込んできたその表情に初めてそして濃厚に異性を感じてしまったんだよ決してお色気に惑わされたとかじゃなくてもっと純粋にそう可愛かったんだよ(早口)。
とはいえ俺は誠実な男。
「ね、姉さんの方が……いや、先生かな……甲乙つけ難いな……」
「なによ煮え切らないわね。ほら!ほら!」
ムキになった姉さんがグイグイ押し付けてくる。もうなりふり構わずって感じだな。事実がどうであろうが都合がいいように事象を上書きしてやろうって意気込みを感じる。なるほど、それなら俺も便乗せねば無作法というもの。
「うーん、お、そうだ。……揉めば、確実に決められそうなんだけど」
「はああっ!?」
姉さんがクワっと目を見開いて叫んだ。
「こ、声がデカい……」
俺の気まずそうな小声に察したのかトーンを押さえる。
「揉めばってあんたね」
「二人称が
「そんなコト言う子だとは思わなかったわ」
「俺も姉さんがおっぱい押し付けながら感想聞いてくるような子だとは思ってなかったよ」
「ぐうう~~~~~~っ」
「産まれましたね。立派なぐうの音ですよ」
「うっさいわ」
「あっはいさーせん」
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