第3話
「なるほど市の教育部に通報するからちょっと待ってて」
ここまで話を聞いた姉さんの目はマジだった。
「いやいや、いやいやいや」
「大丈夫よ姉さんに任せておきなさい、こういうのは24時間対応窓口があるの」
「そんなこと聞いてないから」
「うるさいわね、たとえ君が許しても私と見えざる社会の怒りが許さないのよ! 性交同意年齢に達していようとも教師と教え子が関係を持つのはアウト! 未成年の尊厳を踏み躙るその行い、私と市民の意志による社会的制裁が相応しいわ!」
「エキサイトし過ぎだよ怖いって! それ話が大きくなって絶対俺の進学に響くやつじゃん!?」
っていうか要所要所に「私と」って差し込まれてるのめっちゃ怖いんだよな!
「ぐぬおお……」
姉さんは仇を討ち損ねた侍かなんかのような重苦しい呻きを上げた。
「そ、それにその……それ以上は結局なにも無かったから……うん」
ちなみに先生は「もし表沙汰になって進学に響くと俺もう生きていけないし先生もクビでは」って言ったらすうっと引き下がった。俺はいきり立った相棒の対処を考えながら社会的な死をちらつかされると人間誰しも弱いもんだなってしみじみ思ったものだ。
「そこまで言うなら……まあ、今回は大目に見ましょう。でも次なにかあったらちゃんと私に言うのよ?」
大真面目な顔で言い含めてくる姉さんに俺も神妙な顔で頷く。
「わかった。おかしなことになる前に他の先生とか親にも相談するようにするよ。ありがとう」
俺は至極真っ当に返したつもりだったのだが、姉さんは首を大きく横に振った。
「違う、違うそうじゃない」
「え?」
「私に言うの、いいわね?」
「え、でも……」
「そいつへの制裁は私が決めるわ」
「うん……はい」
その瞳には憎悪とか殺意と言いかえても良さそうな強い決意が漲っていた。これはダメなやつだ。とりあえずその場しのぎの返事をしておいたけれども、姉さんに相談するかどうかはよくよく考えてからにしよう。
この調子だとアングラ寄りSNSのグチッターで世界に拡散大炎上で俺もろとも社会的に抹殺されかねない。
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