第13話 後は僕らがやるしかない

 中学校の校門を入ったところでタクシーは止まった。

 窓越しに、校庭に止まる多くの車が見受けられる。その先に体育館と鉄筋2階建てのこじんまりとした白い校舎が見える。


「ありがとうございました」そう言いながら、財布をだしていると、


「金ならいらねえよ」


  両腕を組んで頑なに拒んでいる。視線はフロントガラスの向こうを見続けている。真剣な眼差しが向かうのは避難所である体育館。


「ヒーローに金を払わせるわけにはいかねえよ」


  眼差しが僕らへと向かってくる。そこから、しっかりやれよ、そんな声が聞こえてくるようだ。


「なんてなっ」


 おどけた口調。

 わざとちゃかした。そんな気がする。


 後部ドアが開き、僕らはお礼を言って車から降りた。

 車は動きださない。助手席側の窓越しから覗き見える横顔は、何か思案しているように見える。


 もしかしたら一緒に――だが、ゴリさんは軽く手をあげ、タクシーをバックさせて校門をでると、そのまま走り去っていった。


 ゴリさんは、僕らを乗せてきてくれただけ。だから、送り届ければ去るのは当然。だけど、なんだか少しだけ……。


「ほら、行くよ!」


 元気な声がし、肩が叩かれた。きっと、胸のうちは同じはずなのに、元気をよそおってくれる美和に、いつも救われている。下なんか向いている場合じゃない。


 校舎の外壁にある大きな丸時計は、すでに14時半をまわっている

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