第12話 修学旅行

修学旅行前日。


私達はテーブルを囲み、明日の話をしていた。


女子校との女子生徒達と修学旅行に行くのは嬉しい半面、複雑だった。


竜神君が去年の学祭の話をしてくれていたみたいで…




だけど…


現実は甘くなくて……




修学旅行、初日。



女子生徒がいて、半々くらいの人数になっていた。




「……………」



「ねえねえ、あの人達、カッコ良くない?」


「本当だ!」


「ていうか、あのグループに女子一人ってさ、有り得なくない?」


「イイ男、一人占め?」


「マジ、あり得ないんだけど?」




私の事を言われているのが分かった。




「………………」



《…帰りたくなってきた…》



ポンと頭を押さえる人影。



「気にするな!」と、竜神君。


「竜神君…」


「堂々としときぃ」と、康介君。


「寮生と同じ学校の特権なんだから」と、亮平君。


「ありがとう…」




私達は、クラスは別々とはいえ、寮生と先生の協力の元、一緒に行動するように言われ許可を得ている。


話によれば、栄次さんからも頼んでくれたみたいで、私が安心して楽しく過ごせるようにしてくれたみたいだ。


とてもありがたいし、周りのみんなに感謝だ。



そして、バスに乗り込み移動となる。



「バスの中が、ホンマ気楽そうやな?」と、康介君。


「当たり前だよー。人の目、気にしないで良いし!」


私は言った。




「気にしすぎだろう?」と、竜神君。


「それ位がちょうど良いよ」と、私。


「そうか?」と、竜神君。


「そうだよ」と、私。




そんな私達を見つめる零一君。




「零ちゃん、気になるの?」


恭吾が俺に気付きこっそり尋ねた。



「えっ?」


「竜ちゃんと悠菜ちゃん」


「いや…」


「…竜ちゃん、告白はしたけど二人は付き合ってないよ」



恭吾が言った。




「えっ?」


「フラれたらしいから」

「そうか。まあ俺には別にどうでも良い話だが」

「クスクス…素直じゃないなぁ〜」

「俺は別に」

「はいはい」




一日目の初日。


何とか過ごす事が出来た。



二日目。


自由時間が多い。



極力、みんなで移動していたものの――――




「ねえねえ、一緒に良い?」




3人のハイレベル高そうな女子生徒が、いかにも寮生狙いと思われる行動をとって私達に近付き声を掛けてきた。



「ねえ、少し彼達、借りて良い?」


「えっ?」



私に尋ねた。



「悪い自由行動とはいえ、彼女一人にする訳にはいかねーから」


竜神君は言った。



「大丈夫よね?」

「高校生だし」



「いや、俺達、クラスがバラバラな中、学校の許可を貰って一緒に行動するように言われてるから」


亮平君が言った。



「そうなんだ。でも、ずっと一緒じゃなくても少し位は大丈夫でしょう?」


「そうそう!ずっと貸してって言っている訳じゃないんだしぃ〜」



「………………」



「女の子だし、一人になりたい位あるでしょう?」




グイッと私を押しのけるように割って入ると、私の返事も聞く事ないまま、彼女達は寮生のみんなの間にバラバラにバランス良く馴れ馴れしく自分達の腕を絡めると連れて行き始める。



「ちょ…ちょっと…!」と、亮平君。


「行こう!行こう!」


「女子生徒さん、借りるわね」



「……………」



私は一人取り残された。


私は、みんなの背中を見つめる中、渋々、一人散策する事にし、背を向ける。




歩き始めた頃。



グイッと腕を背後から掴まれ、振り返る。




ドキン



「零一君…!?」

「竜神が、良かったんじゃないのか?」

「そういう訳じゃ……」


「だったら良いが…みんなから俺にお前を任された!俺は、お前の世話焼き人か!?」


「嫌だったら断れば良かったじゃん…!私は別に頼んでないし!」



「………………」




「みんながあの馬鹿女共に…」





〜 零一 side 〜




「一人位、彼女に渡しても良いんじゃないかなー?」


恭吾が言った。



「確かに。何かあったら責任取れるんか?あんたら」


康介が言った。



「俺達、学校に許可貰ってまで、修学旅行をみんなで楽しもうって思ってたんだけど」


竜神が言った。



「そういう事。俺達と廻るのは構わないけど、こういうやり方は良くないと思うよ?俺…こういうやり方する女子生徒とは廻りたくないかな?」


亮平が言った。



「つまり、そういう事だから、それ理解して貰わないと俺達に関わるのは辞めて貰いたいかなー?」


恭吾が言った。



「………………」



「彼女、元男子校に転入生として来た女の子なんだ。うちらの学年には、女子生徒はいないのも同然だから寂しい思いしてずっと過ごして来た。だから、みんなで話し合った結果の修学旅行なんだ」


竜神が言った。



「そうだったんだ…」


「去年の学園祭も、彼女は辛い期間過ごして学園祭参加していたから、修学旅行に行きたくないって言っていたんだ」


恭吾が言った。



「分かったわよ…じゃあ、一人だけ…なら…」




「サンキュー!つー事で、零ちゃん頼んだ!」と、竜神


「えっ!?俺がか?」


「そうだねー」と、恭吾。


「確かに零ちゃんなら安心して任せられるね!」


亮平が言った。



「零ちゃん頼んだで!」と、康介。





「…つまり…そういう流れだ」




むしろ私は嬉しい。



多分、竜神君は私の想いを知っているのもあり気を利かせてくれたのだろう。


本当は自分の想いもあるというのに……


みんなも気を利かせてくれたのだろうと思う。


私の想いを知っているなら……


そして何も変わらない私達の関係に少しでもという思いも含めた行動なのだろう。



「零一君、本当は迷惑だったんでしょう?大丈夫だよ。来てくれたのはありがたいけど、みんなの所に戻って良いよ」




私は掴まれた腕をゆっくりともう片方の手で離し去り始める。



グイッと再び腕を掴まれ引き止められたかと思うと振り返らせる。



「悠菜!俺は別に迷惑とは思っていない!勝手な思い込みはよせ!」



「………………」



私は下にうつ向く。





冷たくしたり……


優しかったり……



突拍子もない事をする


彼に私の心は振り回されぱなしだ





「………………」



「みんな心配していたし、したくもなる。一人じゃ危険過ぎる!慣れない土地なら尚更だ」




ポンと頭を押さえた。



ドキン



「お前は、みんなに守られてれば良い!」


「…零一君…」



私は顔をあげる。




優しい眼差しで見つめている零一君。



ドキン



私は顔を埋めた。





みんなから守られるのは嬉しい


だけど…私は……



私……春日 悠菜は


あなた専属で


傍で…


隣で…


守られたい………


私はあなたが好きだから……






































 



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