第13話 零一の想い

修学旅行3日目。


みんなで廻っていたんだけど、観光客が多く人混みの多さに私はみんなと逸(はぐ)れてしまった。




「ヤバっ!……どうしよう?」



私は焦った。



一人で廻るも、右も左も人だらけで、どっちから来たかさえも分からなくなっている。


完璧迷子だ!


高校生で迷子。


情けなく恥ずかしい。




その時だ。


私の携帯が鳴った。


画面を見る事なく焦りから確認しそびれ取り敢えず電話に出た。




「悠菜!お前、今、何処にいるんだ?」


「…えっ…?…誰…?」


「何処まで馬鹿なんだ?お前は?零一だ!電話に出る時くらい画面を確認しろ!」


「人が困ってる時に、そんな言い方…酷いよ…説教なんてしないでよ…」


「…はあぁ〜…全く…世話の掛かる寮生の女子生徒だな!それで、何処にいるか言え!周りに何があるんだ?」


私は周りあるものを伝えた。





〜 零一 side 〜



「マズイ…逆方向に近い方向だよ」と、亮平。


「随分と奥に行ったんやな」と、康介。


「無理もないよ。今日は他の学生の生徒や一般の観光客多いってバスガイドさん言ってたしー」


恭吾が言った。



「右も左も分からなくなるだろうな?」と、竜神。


「人の流れに任せて移動したんだろうな。あの馬鹿」


俺は言った。




悠菜の行動に呆れつつも、みんなで協力し、アイツの居場所を理解した。



「俺が迎えに行く!」


「せやけど…」


「事情をバスガイドと運転手と先生に報告しておいてくれ!場合によっては…待ち合わせ場所を変更するように頼んで欲しい。その時は連絡が欲しい」


「分かった!」と、亮平。


「頼んだぞ!零ちゃん!」と、竜神。


「ああ」


「零ちゃん、天気怪しいみたいだから気を付けて!山に近いから温度差と天気の急変ありそうだから」


「ああ」




俺は、悠菜を迎えに行く事にした。






〜 悠菜 side 〜



零一君から連絡が入り、寮生の会話が聞こえていた。


かなり迷惑掛けている。


最低だ。



「今から迎えに行く!お前は下手に動くな!いいな!」


「…うん…」




《集合時間、何時だっけ?》




電話を切ると、空から雨が降り出した。


少し肌寒く感じる。





何回目だろう……?



こうして……



彼を待つこと……





「悠菜っ!」


「零一君……」




グイッと引き寄せ抱きしめられた。




ドキン




「全く…!お前は寿命を縮ませる天才だな!?」

「…ごめん…」





軽く叱りながら


私を優しく抱きしめる


私はいつも


彼の胸の中に


スッポリと


おさまってしまう




「急ぐぞ!」




私の手を掴み私達は雨の中を走り出す。


ひたすら走り集合時間から多少遅れたものの何とか無事にバスに乗り込む事が出來た。


そして気付けば零一君と私はバスの中で寄り添って眠っていた。





〜 零一 side 〜




「羨ましい光景だな!つーか、二人って磁石みたいじゃね?」



竜神が言った。



「何だかんだ言って惹かれ合っている気がするし、似てるよなぁ〜」


竜神が言った。



「本当。だけど、悠菜ちゃんがいない事に、いち早く気付いたよね」


亮平が言った。




「確かに!つーか…零ちゃんもハッキリしていないんだけど、本心はどうなんだろうな…?」


竜神が言った。




俺は、その言葉に目を開ける。


正直、俺は目を覚ましていた。




「そんなに気になるか?竜神」


「うわっ!起きたっ!」と、竜神。


「いや、起きてたの間違いなんちゃうん?」と、康介。


「それで、どうなの?零一君」と、亮平。


「…放っておけないのは確かだ」と、俺。


「そこに恋愛感情はあるのかなー?」と、恭吾。


「…ないとなると嘘になるかもな」



「………………」



「だったら早く気持ち伝えてやれよ!」と、竜神。



「…ある事がきっかけで自分の想いに気付いたんだ。正直、チャンスは何度もあったが…仲が壊れそうで…今のままでも十分良いと思っていたからな…」



「…つーか…それってさ…」と、竜神。


「相思相愛って事?」と、亮平。


「クスクス…」


恭吾は笑う。




「何故笑うんだ?恭吾」


「つまり…二人の間に入る隙は、俺達にはいつの間にかなくなってたって事なんだねー。早く気付けば、こんな事にならないのにー。零ちゃん、告った方が良いよー」


恭吾が言った。



「悠菜も仲が壊れるのが怖いって、そう言っていたけど?」


竜神が言った。





「………………」




相思相愛は意外だった。


いつから俺達は相思相愛だったのだろうか?



俺は竜神が悠菜と一緒にいる姿を見掛けた時、自分の想いに気付いたのだ。


竜神が悠菜を抱きしめている姿を見て竜神に嫉妬する自分がいた。


その後の関係を聞く事も出来ず、俺は自分の想いを抑えていた。


アイツの存在を目で追いながら俺は毎日を過ごし、告白する勇気なんてなかった。




そして、その後、修学旅行は無事に何事もなく終わった。



























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