第11話 竜神の想い
今年は、修学旅行が控えていた。
そんなある日の事だった。
私が席を外した後の事だった。
〜 竜神 side 〜
「なあ、みんなに単刀直入に尋ねるけど、みんなの中で悠菜はどんな存在?」
俺はみんなに尋ねた。
「俺は、寮生以上の気持ちはあらへんで」
康ちゃんは言った。
「俺も寮生以上の気持ちはないかな?放っておけないのはあるけど」
亮ちゃんは言った。
「恭ちゃんは?」
俺は尋ねた。
良く意地悪して悠菜をからかっている恭ちゃん。
そこに好意的な感情があるのは気になる所だ。
「俺?俺も寮生以上の気持ちはないよ。亮ちゃんと同じかな?好きとか、そういうのはないけど目が離せないかな〜?」
恭ちゃんは、そう答えた。
「零ちゃんは?」
俺は零ちゃんに尋ねた。
一番聞きたい相手だからだ。
悠菜に対する想いが正直謎過ぎる。
クールで本心が全く分からない。
一番手強い相手のような気がしたからだ。
無意識にしている悠菜への対応が恋人みたいなやり方。
違う意味で手が早いような…
そう言うと失礼なんだろうけど、先の詠めない悠菜への対応に嫉妬してしまう。
「俺か?俺は、友達以上、恋人未満だ!好きなのか?って聞かれたら…好きだとはハッキリ答えられない!」
零ちゃんは言った。
「彷徨ってる感じかなー?」
恭ちゃんが尋ねた。
案外、零ちゃんの行動はみんな気になっているのだろう?
「彷徨ってる?さあ、そういう感じでもないが?」
零ちゃんは言った。
恋愛に対して疎いのか?
鈍感なのか?
零ちゃんには悪いがやっぱり謎だ。
「そうか」と、俺。
「せやけど、何でそんな事、聞くん?」
康ちゃんは俺に尋ねた。
「悠菜の事が好きだから!コソコソ付き合ったりするのって嫌いだし、ハッキリとみんなの気持ち聞いておきたくて」
「そうなんや」と、康ちゃん。
「つー事で、俺、悠菜に告白宣言します!それより話しは変わるけど、修学旅行控えてんじゃん?」
「あー、女子校と一緒らしいね」と、亮ちゃん。
「ああ。俺的には気が進まねーんだよなぁ〜」と、俺。
「どうして?」と、亮ちゃん。
「悠菜、去年の学祭、女子校で共同してたじゃん?まあ、これは、他の女子生徒もだったんだけど、悠菜に関しては特に受け付けが必要な所で、交代すべきはずのそこのクラスの女子生徒が誰一人と交代しないって事あって…すっげー、酷い目に遭って…」
俺は、みんなに話した。
「そうなんか!?」と、康ちゃん。
「ああ。だから、学祭は回る事なくて…その期間は受け付けばっかだったらしい」
「タチ悪いなぁ〜」と、康ちゃん。
「それじゃ、行きたくなくなるよね…」と、亮ちゃん。
「だから、みんなで出来る限り、悠菜の事、見ててやんねーと」
そんなある日の事。
私は竜神君に告白された。
そして、尋ねられた。
「なあ、単刀直入に聞くけど、悠菜の好きな奴ってさ、もしかして…零ちゃん?」
ギクッ
「えっ…!?いや、違っ…」
「分かりやすっ!」
「いや…でも…最近、私も気付いて…」
「零ちゃん、あんなだし鈍感だと思うけど…。伝えない限り気付かねーんじゃ?もしくは…気持ちを抑えてるとしか…」
「まさか…!そんな事有り得るわけ…」
「いや…零ちゃん、クールだしポーカーフェイスだから俺も詠めないから…。あの、恭ちゃんさえもしてる頭を悩まされている感じだし」
「ええーーっ!?」
洞察力が半端ない、あの恭吾君さえも?
相当、手強いようだ。
「……………」
グイッと竜神君に抱き寄せられた。
ドキッ
「わわ…竜神っ!?」
「悠菜…」
「な、何?」
「頑張れ!」
「えっ?」
「あれは、マジ告しないと後悔すると思う。もし、零ちゃんも満更じゃないなら、尚更だと思うけど?」
抱き寄せた体を離す。
「…そうだとしても…そんな勇気……。それに…今の仲を壊すのも……」
「あー、その気持ちは分かる!男女問わず友達いるから、その気持ちは良く聞く。そんな俺も経験あるから」
「そっか…」
「だけど、零ちゃんに関しては、マジに告って本音言わないと先には進めないと思うけど。一歩、踏み出しな!」
「竜神君…。うんっ!」
「可愛いすぎだろっ!」
「えっ?」
フワリと抱きしめる竜神君。
ドキッ
「少しだけ…こうさせて…」
「…う、うん…」
竜神君の慣れない対応に胸がドキドキ加速していく。
「何かあったら言いな!」
「…うん…」
抱きしめた体を離す竜神君。
「あー、俺も悠菜に好きって言って欲しかったなぁー」
「友達として言ってあげるよ」
「恋人が良いし!」
ちょっとイジケ気味な竜神君が可愛く見えた。
《可愛い♪》
私は笑みがこぼれる。
そんな私達の姿を見かける零一君の姿があった。
そんな事など知るよしもなく――――
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