第10話 想い
ある日の放課後。
正門を出てすぐの時だった。
「悠菜」
背後から名前を呼ばれ振り返るのと同時にグイッと肩を抱き寄せられた。
「きゃあっ!竜神君っ!?」
「最近どうなの?大丈夫?」
「えっ?何が?」
「頭、煮詰まってんじゃね?」
「煮詰まってるって何に?」
「色々」
「どうだろう?」
その時だ。
「お前らイチャつくなら他の所でしろ!」
「零ちゃん!」
更に、そこに――――
「あの…」
女子生徒が声を掛けて来た。
更にそこに―――
「悠菜ちゃん、零ちゃん、竜ちゃん」
亮平君だ。
「……………」
女子生徒はイケメン3人に囲まれ驚くと同時に戸惑っている。
「えっと……」
私は竜神君の手を叩く。
「いてっ!悠菜っち打った!」と、竜神君。
「お前がいきなり抱きつくからだ!」と、零一君。
「竜ちゃん大胆だね。ここ学校だよ」と、亮平君。
「うるさいっ!もう学校の外だし!」と、竜神君。
「まだ学校の間違いだよ。敷地内だから」
と、亮平君。
3人の会話を背後に、私は女子生徒に歩み寄る。
「誰かに用事ある感じかな?」
「えっと…」
彼女の視線は零一君に向けられた。
ズキンと私の胸が痛んだ。
「あー、彼に用事なんだね。…零一君なんだって」
「えっ?」
私は寮に向かおうと歩き始める。
グイッと私の手を誰かが掴み引き止めた。
「竜神君?」
「悠菜、寮に戻らないでくんねーかな?」
ドキッ
竜神君が違う人に感じた。
何処か切なそうに申し訳ない思いを含めた表情。
「亮ちゃん、街、行こうぜ!」
「えっ?あっ、うん…」
突然の事で驚いているような返事をする亮平君。
「康ちゃんは?」
「後で合流する予定で連絡した所」
「サンキュー!つー事で零ちゃん、俺達、悠菜っち拉致りまーす!栄次さんに言っといて!」
竜神君が言った。
「あ、ああ」
私は街に行く事になった。
そんな中、零一君の事が気がかりだった。
しばらくして―――
「悠菜ちゃん、大丈夫?」
「亮平君…」
「気になるんじゃないの?零ちゃんの事」
「だ、大丈夫だよ」
「ごめんな…悠菜…」
竜神君が申し訳なさそうに言った。
「竜神君…大丈夫だよ」
「……無理に笑顔見せなくて良いから」
「……………」
「竜神君…」と、私。
「そうだよ。悠菜ちゃんの本心は分からないけど、同じ寮生なら気になるだろうし」
亮平君が言った。
「それに…俺…悠菜を寮に帰したくないって思ったのもあったのが本音なんだ」
「えっ?」
「竜ちゃん?」
「一人で寮に帰った所で、零ちゃんに聞けないまま、ただただ、ひたすら考える事しか出来ないんじゃないかって…」
「………………」
「それに…零ちゃんも悠菜も自分の想いに気付くきっかけないと何も変わらないと思ったから…だけど…俺ん中では他に理由がある」
「えっ?」
「でも…今は俺の中でも自問自答しながら過ごしてるから確信ない限り、今は言えないけど…」
「竜神君…そっか…」
竜神君は、頭をポンとした。
ドキン
「悠菜には笑ってて欲しい」
ドキン
「竜神君…」
「つーか、康ちゃん遅くね?」
「今、向かっているらしいけど」
「そっか」
しばらくして康介君と合流し、3人は遊ぶ。
私も近くにいたものの、たまに席を外すも、たまに気に掛けて3人が交代で私の様子を見に来てくれていた。
しばらくして私達は帰る事にした。
寮に戻ると恭吾君と零一君は先に夕飯を済ませてて、街に行ったメンバーは一緒に夕飯を摂る事にした。
「悠菜」
ドキン
「零一君。何?」
「いや…やっぱり辞めておこう」
「えっ!?そ、そう?じゃあ、部屋に行くね」
「ああ…」
呼び止めておきながら、やっぱり良いって逆に気になるけど、何か話があったのだろう?
私は疑問に思いながらも、自分の部屋に行くのだった
「そう言えば…女の子に何て返事したんだろう?可愛い感じの子だったし…まあ、関係ないから良いか」
と、自分に言い聞かせるようにするも本当は気になって仕方がなかった。
次の日の朝。
「おはようございます」
朝御飯の準備をしている栄次さんに挨拶をする。
「あら〜、おはよう、悠菜ちゃん」
「あれ?他のみんなは?」
「みんな課外授業とかで早目に学校に行ったわよ〜」
「…そうなんだ」
「うん。悠菜ちゃん達のクラスはないの〜?」
「うん。私達のクラスはないかなぁ〜」
「そう?」
「はい」
「あっ!零ちゃんを起こさなきゃ!悠菜ちゃん適当に食べ始めてて〜」
「はい」
そう言うと、栄次さんは、零一君を起こしに向かった。
少しして戻って来るものの
「零一君、起きましたか?」
「全くよ〜。本当、困ったちゃんね!」
「本当、朝、苦手なんですね」
「そうみたいね〜」
「私、起こして来ます」
「でも、相手は野獣よ〜」
「クスクス…確かに野獣ですね」
「だって、悠菜ちゃん、過去に大変な目にあったじゃな〜い?」
「前は、確かに驚きましたけど、今は違う意味で零一君の事は、存在がちょっと変わったから」
「変わった?あら〜♪恋の予感?自分の気持ちに変化が起きた感じかしら〜?じゃあ…お願い出来るかしら〜?」
「はい」
私は零一君の部屋に行った。
「零一君、起きてーーっ!」
「………………」
「入るよーーっ!」
カチャ
部屋のドアを開ける。
「零一君!起きてっ!!」
「…悠…菜…?」
ボンヤリと私を見つめる零一君の姿。
ドキン
「零一君?朝だよ!起きて!遅刻し……」
グイッと腕を掴み、布団の中に引きずり込ませたかと思ったら、身動きが取れない位、ぎゅうっと抱きしめられた。
「れ、零一君っ!?」
これは意外な展開に、私の胸はドキドキと加速していく。
「ちょ…ちょっと…!」
「少しだけ黙ってじっとしてろ!」
ドキン…
私…好きだ……
零一君が…好き…なんだ……
一緒にこうしていられる時間が
凄く心地よくて……
零一君に触れていたい……
彼の事を
もっと知りたい……
「すぐ着替えて行く!」
「…うん…分か……」
オデコにキスされた。
「……!!!」
《えっ…?…ええっ…!キ、キスされたぁぁぁっ!》
私の胸は大きく跳ね、ドキドキとバクついた。
「………………」
「襲われる前に早く布団から出て退散した方が良いんじゃないないか?」
ドキーッ
クスクス笑う零一君。
バッと布団を剥がし、私の上に股がった。
ドキーッ
しかし、すぐに離れ私の手を掴み起こした。
頭をポンポンとする零一君。
「先に食堂に行け!」
「えっ…?あ…うん…」
私は零一君の部屋を後に食堂に移動した。
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