第6話 スパルタ
ある日の学校帰り、一人で帰っていると
「はあぁぁぁ〜…」
「大きい溜め息だな?人生半分の幸せが逃げたんじゃないか?」
「うわっ!ビックリした!」
背後から声がし振り返る。
「零一君っ!?人生半分って…つーか…吐きたくもなるよ。テストだよ。テスト!」
「休めば良い」
「そんな事は出来ませんっ!」
「真面目だな」
「いやいや普通でしょう?」
私達は時々、話をしながら寮に帰る。
夕食を済ませ今日は、みんな各々、早目に部屋に戻る。
みんなテスト前で勉強でもするのだろう。
そんな私も勉強をする為、部屋に戻る。
色々と済ませ勉強するものの夜も更けた頃。
「ヤバイ…眠くなってきた……」
その時だ。
バコッ
後頭部を叩かれた。
「いったぁっ!」
バッと振り返る視線の先には零一君の姿。
「零一君っ!?」
「見に来てみればサボりか!?」
「サボってないっ!睡魔に…つーか、教科書で打ったよね?馬鹿になるから!」
「逆に頭が良くなるんじゃないか?教科書の中一気に頭に入っただろう?」
「はあぁぁっ!?ありえないからっ!反対に馬鹿になる!」
「お前は元々、馬鹿だろう?」
「もうっ!邪魔するなら出て行って!」
「寝ていた女が言える言葉か?」
「うるさいなーっ!寝てませんっ!眠くなっただけですっ!とにかく勉強…」
「貸せっ!」
私が持っているシャーペンをスッと取る。
「あっ!」
「基本さえ頭に叩き込んで置けば良いっ!」
「基本って言われても…」
そして、零一君は私の勉強に付き合ってくれた。
時々、怒られながらも分かりやすく教えてくれた。
「凄いっ!でも、零一君は良いの?」
「何がだ?」
「勉強」
「お前と違うからな」
「何?その自信!マジムカつくんですけど!」
クスクス笑う零一君。
ドキン
普段見ない零一君の笑顔に胸が大きく跳ねる。
「俺の心配する暇があるなら勉強するんだな。俺は、お前に教えながら勉強は出来る」
「…でも…」
ポンと頭をする。
ドキン
「気にするな!その代わりお前が赤点採ったら、ただじゃ済まさないからな」
「えっ!?何それっ!」
「俺が時間割いて教えてあげて赤点なんてありえない!赤点なんて採ったら本当の馬鹿だ!」
そして、その結果―――――
学校帰りの事だった。
「ヤッター!赤点なし!零一君のお陰だね!」
「赤点採る方がおかしい!」
「ありがとう!零一君!」
「別に。お前の頑張りが結果になったんじゃないのか?まあ、今回は赤点免れたが、次回は赤点ばかりだろうな」
「酷っ!どうしてそう意地悪言うかな?」
「面白いからだ」
「面白いって……。人の事をおもちゃにしないでくれる?それより、零一君は大丈夫だった?」
「何がだ?」
「赤点」
「俺に赤点という文字は存在しない!」
「うわぁ〜…どんだけの自信なの?」
「当たり前だ。悪いが俺は学年トップ3に入っている男だ」
「えっ!?…マジ?」
「ああ」
「……………」
「な、何だ?」
「脳みそ交換しよ♪」
「馬鹿か?お前の脳みそなんて、こっちからお断りだ!」
「酷っ!」
クスクス笑う零一君。
ドキン
胸が大きく跳ねる。
「あっ!ねえ、何かお礼したいんだけど?」
「お礼?」
「赤点採る事がなかったお礼。零一君のお陰だし」
「別にいらない!」
「ええっ!?私の好意を」
「好意!?だったら次回も赤点採るな!それ以外ない!」
「……えっ!?それは…無理だと思う」
「やる前に諦めるのか!?」
「だって…」
「だったら…」
グイッと手を掴みセメント壁に押し付けた。
ドキッ
「毎日勉強するんだな!」
スッと離れる零一君。
「あっ!ちょ、ちょっと!待ってよ!」
グイッと零一君の腕を掴む。
ドキッ
壁に手を付き至近距離になる私達。
「…急に掴むな!馬鹿、悠菜」
「ご、ごめん…」
「それともお前は…」
クイッと顎を掴まれた。
「何かをお求めか?さっき、お礼のどうとか言ってたからな?」
更に顔を近付ける零一君。
かああああ〜!と熱くなり、目を閉じた。
次の瞬間。
鼻を摘まれた。
「バーカ」
《えっ?》
そう言われて、目を開けると帰って行き始める零一君。
「本当、お前はオモチャにされやすいキャラだな」
「えっ?ちょっと!良いのか、悪いのか分からないんだけど!」
私達は騒ぐ中、帰る事にした。
それから気付けば学校迄の道程は、零一君との移動が増えていた。
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