第2話 異性の部屋

「五十嵐、五十嵐はいないのか?」



《あれ?零一君…学校に来てると思ったけど》



その日、零一君は学校に姿を現さなかった。


その日の寮での事。




「栄次さんっ!」


「あら?おかえり〜。悠菜ちゃん。なぁに?どうしたの〜?そんなに慌てて〜」


「ただいま。あの、それより、零一君は?」

「まだ帰ってないわよ〜」


「じゃあ、やっぱり学校にいたのかな?」

「そうなんじゃなぁ〜い?」


「だけど…一日教室に来なくて欠席扱いされてるかと…」


「あら〜、悪い子ね!」

「かったるい授業なんて受けてられない」

「えっ?」



背後から声がし、振り返ると、そこには零一君の姿。




「零一君!?いや、でも単位取れなくなるよ!今日なんか欠席扱いされてるんじゃ…」


「体調不良と言っておいたからな。問題はないっ!」


「体調不良って……明らかに元気じゃん!仮病!」


「うるさいっ!いちいち俺の事は干渉するな!」


「干渉するとか、しないとか、私はただ……」




私の両頬を摘まれた。



「痛い…」

「痛くないのがおかしい!」



そう言うと私の両頬から手を離す。




「お前が俺の分まで受けたらどうだ?」




部屋に移動する零一君。


私は、その後を追うように自分の部屋に移動する。





「零一君って案外不良寄り?中学の時もサボり気味な生徒だったんじゃ」


「さあな」


「真面目に答えてよ!」


「答えて何になるんだ?」


「いや、コミュニケーションだよ!」




グイッと腕を掴み壁に押し付けると行く道を塞いだ。



ドキッ



「いちいち俺に構うな!お前といると疲れる!」




そう言うと自分の部屋に入って行った。




ズルズルと体を壁に添って崩していく。




「………………」



「ビックリしたぁ〜……」




次の日――――



「おはようございます」


「あら?おはよう、悠菜ちゃん」と、栄次さん。


「おはよう。悠菜ちゃん」と、恭吾君。


「おはようございます。おはよう、恭吾君。あれ?他のみんなは?」


「3人は、先に行ったわよ〜」と、栄次さん。


「そうなんですか?早っ!」


「ただ、零ちゃんがまだ、起きてなくて〜。本物の女の子の声なら起きてくれるかも〜?」


「つまり…それって…私が、零一君を起こすという流れ…ですか?」


「だって〜、私が起こしても起きないから〜。この際、本物の女の子に起こして貰おうって思って。本当は宜しくないんだけど〜…お願い出来る〜?」


「分かりました!行って来てみます」




《昨日、私といると疲れるって言われたばかりなんだよなぁ〜》



私は、零一君の部屋に行く事にした。



《男の子の部屋に入るなんて初めてなんだけど》



「零一君、起きてーーっ!」



ドア越しから言うも反応はない。



「……………」



「部屋、入るよーーっ!」



カチャ

部屋のドアを開ける。




「………………」




「零一君、起きてよ!」



ユサユサと体を揺らす。



「ねえっ!朝……」



グイッと腕を掴み布団の中に引き摺り込ませたかと思うと私を押さえ付け股がった。




ドキーッ

突然の出来事に驚くのと同時に胸が大きく跳ねた。



《わ、わ…何!?ヤ、ヤバくない…!?》

《れ、零一君…!?》



「朝から騒々しい奴だなっ!?」

「えっ…?…いや…栄次さんが…」


「……………」


「起こしたけど起きないとかで…頼まれて…」


「俺が男だと分かっておきながら何故、悠菜を寄越すんだ?」


「し、知らないよ!本物の女の子の声なら起きるかもっていってたし。つーか、早く降りてっ!」


「そのまま襲っても良いが」




ドキーッ

胸が大きく跳ねた。



「えっ…?お、襲…」



顔を近づけて来る。




「ちょ、ちょっと零一君っ!?」



スッと離れ私から降りた。



「好きでもない女に手なんて出せる訳がない!」



「………………」



「すぐに着替えて行く。先に行ってろ!」

「わ、分かった…」



私は一階の食堂に行く。




「零ちゃん起きたかしら〜?」



栄次さんが尋ねた。



「着替えて降りて来ると思います」


「そう?それなら良かったわ。ありがとう」


「いいえ」




少しして―――――




「おはよう、零ちゃん」と、恭吾君。


「ああ」


「来た来た。もうっ!私の美声で起きないから悠菜ちゃんを起こしに向かわせたわよ」


「男の俺に本物の女を寄越すとは、どうかしてる!」


「仕方ないじゃなぁ〜い。だったら、私の美声で起きたら良い事でしょう?」


「低血圧の俺には無理だ!」


「じゃあ、零ちゃんの起こす係りに悠菜ちゃんを推薦しようかしら?すぐに目が覚めるでしょう?」


「い、いいえっ!勘弁して下さいっ!いつか本当に襲われそうなので」


「へぇー、さっき、そういう事あった感じかな?案外、大胆なんだね?零ちゃん」



恭吾君が言った。



「朝からうるさかっただけだ!小型犬みたいにうるさいから布団の中に引き摺り込ませて黙らせてやった!」



「……!!!」



「本当に悠菜ちゃん、襲われそうだね〜」


恭吾君が言った。


「そ、そうでしょう?あっ!零一君、今日こそは授業受けなきゃ駄目だからねっ!」


「また、その話しか!放っておけっ!俺に構うな!と言ったはずだが?」


「私が同じ寮生だからって聞かれるから出席してもらわなきゃ困るの!」


「適当に体調不良と言っておけ!」


「毎日、そういう訳にはいかないでしょう?」



「……………」



そして、その日は授業に出てくれた。


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