第16話 夏祭り、花火大会

夏祭りの日。


寮生のみんなと行く事になった。



「まあ、可愛いじゃな〜い♪」

「ありがとうございまーす♪」

「さあ、みんなにも見せておいで〜」

「はい」




とは言ったものの、いざ見せるには勇気がいる。


滅多に着ない浴衣。



夏祭りには欠かせない浴衣だけど寮生のみんなの事だ。


見せに行った所で褒められるか貶(けな)されるかのどちらかだ。







その時だ。




食堂から。




「最初は、グー、ジャン、ケン、ポーン!」



ジャンケンをする声が聞こえて来た。




「……??」




私は背後にその声を聞き、そのまま食堂に入らず身を隠すように隠れて様子を伺っていた。




「あいこでしょ!?」


「あいこでしょ!?」



「ヤッターっ!勝ったーーっ!」


「寮ちゃん違うって!負けた奴だしっ!」

「えっ!?ええーーっ!嘘っ!マジで!?」




私は亮平君の反応に笑みがこぼれた。




「だって、いつも勝った奴が得してんじゃん!たまには負けた奴にも良い思いしてもらわねーと」


「じゃあ、誰?」


「康ちゃんだね」




ドキン


名前を聞いて胸が大きく跳ねる。




《えっ!?康ちゃん?康介君?あれ?好きな人…誘わなかったのかな?》




私は顔を出した。



「康介君!好きな人誘わなかったの!?」


「えっ!?」


「好きな人ぉぉぉっ!?」




亮平君と竜神君が声を揃えて叫ぶように言った。




「何?康ちゃん好きな人いんの?」と、竜神君。


「いや……えっと…ちゃうで!ちゃう!ちゃう!悠菜っ!何で言うんやっ!?」


「言いたくもなるよ!好きな人誘って夏祭りデートして告白すれば良いじゃん!」


「じゃあ、いるんだ!誰、誰?」と、竜神君。


「言えるわけないやん!誰が言うか!」


「じゃあ…やっぱりいるんだ!」と、亮平君。



「………………」



「じゃあ、誰が悠菜ちゃんと祭りに行くの?」


亮平君が言った。



バシーッと亮平君の頭を康介君が打った。



「いってぇぇっ!」

「俺が行くに決まってるやん!」

「康ちゃん、マジ打ちしたぁぁぁっ!」

「当たり前やっ!友達には容赦ないっ!」



「………………」



「…あの…ジャンケンしたのって…?」と、私。


「悠菜ちゃんと夏祭りデート!悠菜ちゃんの浴衣、独り占め。浴衣、似合うよ悠菜ちゃん」




恭吾君が笑顔で言ってくれる。



「ありがとう」


「馬子にも衣装だな?」と、零一君。


「相変わらず失礼だよ!零一君」


「悪くない褒め言葉だろ?」


「いやいや…」




クスクス笑う零一君。




「可愛いよ。悠菜ちゃん」と、亮平君。


「似合ってんじゃん!良いよなぁ〜。康ちゃん。悠菜、独り占めかよ!」



竜神君が言った。




「しゃーないやん!今日は、負けた奴の特権や!」



ニカッと笑う康介君。




「お前ら喧嘩するんじゃないぞ?」と、零一君。


「そうだな。お前ら良く喧嘩してるし!夏祭りは危険がいっぱいなんだから!康ちゃん、悠菜、頼んだからな!」



竜神君が言った。



「任せときぃ」と、康介君。


「康ちゃん、絶対に悠菜ちゃん一人にしないでね〜。もし、したら俺マジ怒るよー!」



恭吾君が言った。




「恭ちゃん、目が笑うてへんから怖いわ!」



クスクス笑う恭吾君。





「当たり前じゃん!だって好きな人に何かあったら嫌だし〜」


恭吾君が言った。





「そうだな!恭吾は、悠菜が好きだからな」と、零一君



「そういう事〜」と、恭吾君。





そして、私達は一先ず寮から祭りの会場まで、みんなていどうして二手に別れる。






みんなとの別れ際――――



「悠菜ちゃん」



恭吾君が呼び止めた。



「何?」

「これ悠菜ちゃんに似合いそうだと思って」



目の前に差し出されたのはブレスレットだ。


そのブレスレットをつけてくれた。




「わあ…可愛い~♪」

「…悠菜ちゃん……うまくいくと良いね」

「えっ?」




そして頭をポンポンとすると、おでこにキスした。




ドキン




「うわっ!恭ちゃん大胆!」と、竜神君。


「デコチューしたぁっ!」と、亮平君。


「アイツは人の目気にしないんだろう?好きな女なんだから」



零一君が言った。


「じゃあ、康ちゃんと楽しんでおいで」


「…うん…」



そして、去って行く。




「…恭吾……君……?」




何かを察していたのか恭吾君の表情が、切なそうにしているように伺えた。


私は恭吾君の背中と手首につけられたブレスレットを交互に見つめ、キスされたオデコの余韻を感じる中




「悠菜、行くで!」



グイッと手を掴まれた。



「うわっ!」



私達は別れた。
































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