第15話 あなたと行きたかった夏祭り

休日、街を一人で散策していると康介君と遭遇した。


いつも一緒にいるメンバーの竜神君と亮平君は遊園地に行っているらしく、まさかの絶叫マシンや高い所が苦手で高所恐怖症だという康介君の意外な真実が発覚。


いつも言い合う私達だからこそ、冗談でデートに誘ってみた。



絶対に断るはず!


そう思った矢先の返事が意外な答えが返ってきたのだ。



二人でフレンドデート。



日頃、見せない康介君の色々な態度や姿に驚かせ戸惑う私。


そして、意外な事が発覚してしまい、私の胸の奥が凄く痛んだ。


そこで自分の想いに気付いてしまった私だけど―――




「なあ、悠菜、お昼どうするん?」

「えっ?」

「ガッツリ食べるんか?」

「あー…そうだなぁ~…康ちゃんは何が食べたい?」



普段呼ばない呼び方で呼んでみた。



「…えっ…?」



驚くのと同時に康介君の顔が何となく赤い。



「は、反則やろ…!」

「何が?恋人気分で良くない?」




べシッと頭を叩かれた。



「痛っ!」

「何が恋人気分じゃ!お前、後で覚えてろや!」


「あっ!もう忘れた!それよりお昼はね…洋食食べたいかな?」


「洋食系?別にええよ」



私達は昼食にする事にした。



昼食を済ませ再び街をブラつく。


そして、一枚のポスターに目が止まった。




「…夏祭り……花火大会…か……」




ポツリと呟く私。


すると、ポスターに一足遅く気付く康介君も足を止めた。




「おっ!夏祭りやん!もうそんな季節になるんやな?」


「そうだね。あっ!そうだ!康介君、好きな人誘って告白したら?」


「えっ!?」


「夏祭りデート!良いかもよ。寮生みんな行くのかなぁ~?みんな彼女いてもおかしくないルックスだし」


「せやけど、みんな彼女いてる様子ないで?」


「そう?だけど竜神君は男女問わず仲いいし、友達多いから案外、今日は、亮平君達は女の子達と一緒かもよ」


「まあ、二人ともフレンドリーやしな」


「でも、本当、みんなと行ったら楽しいだろうなぁ〜。みんなに聞いてみようかなぁ〜?」


「聞かんでもみんな同じなんちゃうん?」


「えっ?」


「寮生みんなで行く事になると思うで?」


「康介君以外はね?」


「何でやねん!」


「康介君は好きな人を誘うべきだよ!」


「悠菜、俺は…」




グイッと引き寄せられ、オデコにキスされた。




ドキーーッ



「………!!!」


「こ、康介君っ!?ちょ、ちょっと…!ここ街だよ…!」


「恋人気分味わうためや!さっきのお返しや!唇はとっとかなあかんからな」




私達は騒ぐ。



その日の夜、寮生のみんなと食事を済ませ食堂でゆっくりとしているみんなに尋ねた。



「ねえ、ねえ、ねえ!」


「何?悠菜テンション高くね?」と、竜神君。


「夏祭りあるらしいけど、みんな行くの?」


「夏祭り?」と、竜神君。




私はチラシを見せた。



「夏祭りかぁ〜」と、竜神君


「良いね!」と、亮平君。


「だよね?私、浴衣着ようかな?」



「浴衣あぁぁぁっ!?」



寮生の恭吾君、零一君以外のみんなが声を揃えて言った。




「な、何?」


「誰に見せんねん!」と、康介君。


「誰にって…みんなに。だって私、みんなのアイドルだし」




ベシっと誰かに頭を叩かれた。



「いったぁぁっ!」



康介君から叩かれるより痛い。


だけど、いつもの流れで




「今、叩いたの誰っ!?康介君っ!?」


「いやいや、俺ちゃうで!瞬間移動でもせな、この距離は無理やって!」


「確かに…。だけど、本当、痛そう…」と、亮平君。


「今のは半端ない痛さだぞ…」と、竜神君。


「どうだ?目、覚めたか?悠菜」



クスクス笑いながら言う零一君の姿。



「もしかして…今叩いたの…零一君!?」


「そうだが。お前が寝ぼけた事を言うから目覚めさせてやっただけだ!」


「馬鹿になる!」

「元々、馬鹿だろう?」

「酷っ!」


「何か、康ちゃんとのやりとりを見てる気がするんだけど」



亮平君が言った。




「俺は零一だ!」


「康介、2代目!」と、竜神君。


「どうして、そうなる!」


「良いんじゃない?零一君」と、私、


「お前まで言うのか?」と、零一君。


「言います!人の頭を叩いておきながら。本当、康介君みたい!」


「俺は、一人でええやろう?二人もいらへん!」


「でも、ここに、もう一人いるよ?」



再び、零一君が私の頭を叩いた。




「ったぁーーっ!もっと手加減してよ!」


「お前に手加減するつもりはない!」


「ムカつく!女の子なんですけど!」




両頬をつままれる。




「…痛ぃ…」



「一応な」



イタズラっぽく笑う零一君。


私達の寮賑わっていた。






本当は


あなたと


行きたかった


夏祭り




だけど……




あなたの隣は


私じゃない………










 











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