第14話 フレンドデート

「悠菜ちゃーーん」



栄次さんが私を呼んだ。



「はーい」



私は栄次さんの元へと向かう。




「はい、何ですか?」

「ほらぁ〜見て〜」

「あっ!前に言っていた浴衣ですね!」

「そうなのよー。一式揃っているから着るなら言ってぇ〜着付けも、この栄次様にお任せ〜♪」


「凄い!着付けも出来るんですね!」

「出来るわよー♪」



《夏祭り…行けたらみんなと行きたいけど…》




ある日の休日。


私は一人、街に出掛けた。


久しぶりの街だ。




「カラオケに行った以来かな?」




《カップル…多いな…》

《一人で街にいるのは寂しいかも…》



気にしていたらきりがないと思い自分一人の時間を楽しむ。



「あっ!可愛い♪」



私は髪飾りが目についた。


手に取るも迷っている。



《どうしよう?》


《でも、欲しい…だけどなぁ〜…》




迷う私。



「悠菜」



ビクッ



「うわっ!」



突然に名前を呼ばれ驚き髪飾り落としそうになった。


振り向く視線の先には康介君の姿。




ドキン


何故か胸が高鳴る。



「康介君!?もう!いきなり声掛けないでよ!」


「しゃーないやん!」


「あれ?康介君、一人?」

「せやけど?」

「珍しい!いつものメンバーは?」


「亮ちゃんと竜ちゃんは遊園地行く言うてたで」

「ええーーっ!私も行きたかった!」

「そんなん言われても」



カラオケに行って以来、みんなと過ごす時間は戻る。




「声掛けてくれれば良かったのに…それで康介君はどうして行かなかったの?」


「俺?…俺…苦手やねん」


「えっ?」



「もちろん遊園地は好きやで!せやけど…絶叫マシーンとかはアカンねん!」


「えっ?絶叫マシーンあっての遊園地だよ。何の為の遊園地なの?」


「アカン!アカン!落ちるーー!って恐怖に陥るし、高い所も苦手やねん!」


「えっ!?意外っ!先頭きって、はしゃいでそうなのに」


「あんな、俺かて苦手なもんはあるわ!」


「そうなんだね」


「お前はショピングかいな」


「うん。まあ、そんな所かな?」


「前にも沢山、買うてたやん。どんだけショピングすんねん!」


「いや、その時はその時。だって時期によって店内も変わるし。春夏秋冬あるから。今日は、プラ〜っと散策中」


「そうなんや」


「康介君は相変わらずゲーム三昧?」


「いや…ゲーム三昧もなぁ〜……今日は軽くする程度でええかなぁ〜?」


「そうなんだ。彼女いればデート出来るのにね」


「そうやな」


「この際、私とデートする?」




軽い気持ちで冗談を言ってみた。


“誰がするか!”


と、関西のノリで断ってくるだろうと――――




「この俺にデート申し込むんか?デート代もらうで!」



「えっ…?ええーーっ!」

「何やねん!」


「まさか、そんな返事が返ってくるとは思わなかったんだけど!?しかも…デート代もらうとか有り得ない!」


「アホっ!誰がデート代もらうかっ!デート位、なんぼでもしたるわ!」




ドキッ


まさかの意外な返事に胸が大きく跳ねた。




「…えっ…?」


「何やねん!そのアホ面はっ!」

「いや……。ていうかアホ面って失礼なっ!」

「それで?」

「えっ?」

「デートしてほしいんか?」

「いや……。えっと……」



康介君の意外な返事に戸惑う自分がいる。



「だ、大丈夫だよ!女の子の買い物って長いし時間が掛かるから。康介君、暇で暇で仕方がないと思うし。だから…」




スッと私の手を握った。



ドキン…


胸が大きく跳ねた。




「ええよ」

「えっ?」


「お前とクラス別れてるんやし出掛ける事もそうない。たまにはええんちゃう?俺はかまへんで」


「康介君……」




顔を合わせる度に言い合う私達。


いつになく優しい康介君に戸惑う中、胸がざわついた。




「………………」



「で?それ買うん?」

「えっ?」

「髪飾りちゅうの?」

「あ…いや…可愛いと思って迷ってた所で……」


「最初の直感大事やで?パッと見て可愛いとか綺麗とか、その時に思った瞬間は大事やと思うんやけど。悠菜に似合うと思うで」




《わわ…ちょっと!待って!ストレートにサラっと言われたんですけど……》



私は顔が赤くなったのが分かった。



「えっ?何でそんなん顔赤くするん?俺は普通に言うただけやで?」


「違う!いや…あの…康介君とは日頃、言い合ったりしてるから…」



「………………」



もう片方の手で康介君は頭をポンとして、のぞき込んだ



ドキッ



「悠菜ちゃーん。似合う似合わんは俺かて言うわ!友達だろうと恋人だろうと客観的に意見は普通に言いますぅー。ほらっ!買うてきぃ」


「う、うん…」



《ヤバイ……康介君じゃないみたい…》


《…友達じゃなくて、私、男の子として意識しちゃいそう…》




私は取り敢えず買うことにした。


康介君の所に戻ると、スッと手を繋ぐ康介君。



ドキッ



「ねえ、康介君」

「何?」

「手…繋ぐの癖なの?もしくは好き?」

「えっ?」

「いや…私と良く手を繋ぐなぁ〜と思って…」

「あー、理由あるで?」

「どんな?」

「お前が迷子にならんようにや!」



イタズラっぽいような憎めない笑顔でニカッと笑う。



「えっ!?ま、迷子って…ならないから!」

「分からへんやん!」



私達は騒ぐ。




「まあ、今日は二人だけやから。繋がれた手は離す事はでけへん!」



ドキン

胸の奥が小さくノックした。




「えっ?」

「だってな、今日は一応デートやし!」




ドキッ

デートという言葉に胸が大きく跳ねた。




「今日だけの恋人やから」




ドキッ


更に胸が大きく跳ねる中、私の顔は赤くなった気がした




「その反応何なん?俺達だけなんやし尚更、日頃見せへん俺出すわ!まあ、見せへんというより…見られへんが正しいかもしれへんな」




《私の知らない康介君に振り回されそう…》




「なあ、突然なんやけど、お前、好きな奴とかいてるん?」


「えっ!?」


「いや……。恭ちゃん、お前の事が好きみたいやし恋人やなくても、ゆっくり付き合うてもええんちゃう?」


「確かに恭吾君から告白されたけど、付き合うとか付き合わないとか、そういう気持ちにならないっていうか…」


「そうなんや」


「うん…。そういう康介君こそ、モテ期到来なんじゃないの?」


「確かに、あれから何回か告られてんけど…」

「付き合えば良かったじゃん!」

「無理なんや」

「えっ?どうして?」

「いてるから」

「えっ?」

「好きな人がいてるから」




ズキンと胸の奥が痛んだ。



私は繋いでいた手を離そうとしたけど出来なかった。






――――離したくない――――



そう思ったから


離したら


そのまま


終わりそうで――――




――――そして――――



自分の想いに


気付いた瞬間だった………





「そうなんだ。それなのに私と手繋ぎデートって誤解されちゃうよ」


「そん時は、お前が誤解といてな」

「何で?ややこしくなるから」



康介君は笑う。





――――ねえ




この幸せは


いつまで続く?




あなたの事が好きって


気付いた瞬間


既に遅くて



あなたに


好きな人が


いるなんて………



もっと早く


自分の想いに


気付いていたら



あなたと


付き合う事


出来たのかな……?



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