第10話 進級、離れ離れに・・・

高校2年生。春。


今年は、1年生の女子入学が多い。


寮生みんなと、いつものように肩を並べて歩く校舎までの道程。



「ヤッター!女子増えてる!」


「良かったなぁー。悠菜。お前のモテ期も終わりやな?」


康介がイタズラっぽく笑う。



「そ、それは、それで、ヘコむ!」


「お前、自分がモテるとでも思っとたんか?」


「いや……そういう訳じゃ…ないんだけど…。…今年は寮生のみんながモテ期かな?」


「おーーっ!ええな!」


「モテモテなら恭ちゃんじゃね?」と、竜神君。


「俺が何?」と、恭吾君。



「うおっ!突然出没の恭ちゃん!」と、竜神君。



背後から突然割って入って来る恭吾君。



「何の話?」と、恭吾君。


「モテモテの話」と、私。


「モテモテ?」と、恭吾君。


「うん。寮生のモテモテなら恭吾君じゃないかって話してたの」


私が言った。




「あー…でも、俺が例えモテモテだとしても、悠菜ちゃんさえいれば良いかな?」


「えっ!?」


「なーんて!」


「…相変わらず今年も恭吾君に弄られキャラか…私…」


「でも、ちょっと本音だったりして」


「えっ?」



「悠菜ちゃんみたいな女の子いないよ」と、恭吾君。


「悠菜ちゃんは、寮生のアイドルだからね」と、亮平君


「アイドルじゃないだろう?」と、零一君。


「ちゃう、ちゃう!」と、康介君。


「絶対にないな!」と、竜神君。




《相変わらず失礼な寮生メンバーだなー》

《私は多分みんなの恋愛対象とは程遠いかも……》




「今年も…春…来ないかもな……」



ポツリと呟く私。




「春はもう来てるで?」と、康介君。


「そうだぞ!」と、零一君。


「いや…多分…康介君と零一君の春って…今の時期の事でしょう?」


「悠菜ちゃんの春は、もう1つの意味だよね」


恭吾君が言った。



「悠菜ちゃん、彼氏欲しいの?」と、亮平君。


「出来れば…でも…出逢いないし……」


「悠菜ちゃん可愛いから後輩の子が寄ってくるんじゃない?」


亮平君が言った。



「そうだと良いけど……年下か…」


「年下は、ノーサンキュー的な感じ?」と、恭吾君。


「うーん……どちらかと言うと私の全て受け入れてくれて、ありのままの自分でいられる方が良いかな?」



「じゃあ、康ちゃんだ!」と、恭吾君。


「えっ!?」


「俺!?」



「………………」



「いつも言いあって喧嘩してるし」と、恭吾君。


「あー、確かに!」と、竜神君。


「いや…だとしても…多分…喧嘩別れしたりして、別れて、より戻っての繰り返し恋愛」


亮平君が言った。





「ねえ、あの人達カッコ良くない?」

「本当だ」


「カッコイイ♪」


「本当だ」


「何年生だろう?」




そういう声が私の耳に入って来る。


みんなは私の理想の恋愛を面白く話をして勝手に盛り上がってる為、気付いている様子はない。



《やっぱ目立つんだよね…みんな…》

《確かにカッコイイし…》




高校2年生になり亮平君と零一君が同じクラスになり、康介君と別れてしまった。


別に問題はないんだけど、淋しく感じるのはどうしてだろう?


馬鹿しあっていたからだろうか?





ある日の放課後――――



「悠菜ちゃん、そのまま帰る感じ?」


亮平君が尋ねてきた。



「えっ?あ、うん」


「じゃあ、強制じゃないんだけど、あそこの廊下で犬みたいに尻尾振っている奴いるんだけど…」


「えっ?」



視線の先には康介君の姿。



「街に行きたいって言っている雑種の康ちゃん」


「クスクス」



不思議に犬に見えてくる私はつい笑ってしまった。


哀しい瞳で構って欲しいと訴えていて近くに行ったら飛び付く勢いの雰囲気。


ゴロンと寝て甘える感じのイメージではない。




「どうする?」

「良いよ」

「じゃあ、行こうか?」

「うん」




私達は街に出た。




クラスは別れたものの、こうして出掛けられるなら良いかな?


そう思う中、学校帰りの放課後、寄り道をした。


そして、楽しい時間も束の間。


余り遅くなるのもいかず、私達は帰る事にした。


ゲーセンを出てすぐの事だった。



「あの…すみません」




他校生の女子生徒が呼び止めた。


大体の予想はつく。



「あの…二人にお話があるんですけど…少しだけ…時間良いですか?」


「二人共、先に帰るね」



「駄目だよ!」

「そうやで!」



二人に止められた。



「ごめん…今日は無理かな…?話なら明日聞くから待ち合わせしない?」



亮平君が言った。



「えっ?あっ!はいっ!」


「ここで待ち合わせしようか?」


「はい、分かりました」




私達は別れた。


私がいたばっかりに断りを入れたのだろう




「ごめんね…私がいたばっかりに…」


「悠菜ちゃん、気にしなくて良いよ」と、亮平君。


「そうやで!」と、康介君。



「………………」



私は帰るものの、正直、複雑だった。



《亮平君も康介君も目立っているから》

《見てる人は見てるんだ》





いつかは


こんな日が来るとは


思っていた



街で見掛けたりする


カップルを見てると


羨ましい半面



みんなにも彼女ができたりして


バラバラになる



みんなの中で


恋愛対象になるの…?



寮生に


何組のカップルが出来る…?






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