第7話 救世主

ある日の学校帰り、私は用事で街に出掛けた。


用事を済ませ帰ろうとしたが雨が降っていた。



グイッと肩を抱き寄せられた。



「きゃあっ!」


「ねえ、何処か遊びに行こう!」

「君、可愛いよね?」

「つーか、この制服って何処?」

「ここは…」


「あんたらには関係あらへんやろ?」




《康介君…》



「誰だよ!お前!」

「その子、俺の連れやねん」

「嘘ばっか」



私達の間に入って来る康介君の姿。



「おいっ!どけよっ!」

「ええよ」



そう言うと私の手を相手にバレないように掴む。




《…えっ…?な、な、何?何?嫌な予感がするんだけど…》




「悠菜、メッチャ走るで。そして奴等を撒く!エエな」




次の瞬間――――




グイッと引っ張られ走り出した。




《早っ!》




「野郎っ!」

「待ちやがれ!」


「何でーーっ!?どいて言うたやーーん!」


「ふざけんなっ!」


「えーーっ!俺、間違うてへんやーーんっ!」




そして、何とか撒いた様子。




「全く何してんねん!」

「いきなり説教?」

「したくもなるわ!アホっ!」

「ア、アホって…」


「街に行く時は、単独行動するんやない!声かけろや!」



《えっ?つまり…それって…心配して…》





私は一人で街に来たのだ。


まさか康介君が来ているなんて思わなかった。


多分、偶々見掛けて後をついて来てくれてたんだと思う。




「ごめん…」


「…帰るで!」



「………………」



「悠菜?何してんねん!帰らへんのか?」


「帰るよ。帰るけど…私、傘もってないし。ていうか買いそびれてるし…」



「………………」



「ほな一人で、そこにいるしかないな。お先」


「どうぞ!」



《一瞬良い奴と思ったけど…》



「………………」



グイッと私の手を掴み引き寄せる。




ドキン



「全くどうして俺がお前のせなアカンねん!」

「誰も頼んでないし!」


「ムカつく!ホンマ可愛くないわっ!お前濡れて帰りぃ〜」


「だから先に帰れば良いじゃん!ついでに傘持ってきて♪」



ベシッ

オデコを叩かれた。



「いったぁ!」

「お前何様じゃ!」

「お嬢様!」

「はあああっ!?いやいや、ちゃうちゃう!お嬢様ちゃうで!」


「可愛しっ!」

「可愛くないわ!何の関係があんねん!」


「お料理出来るし〜」

「それは認めたる!」


「スタイル良いし〜」

「いやいやドラム缶やろ?」


「頭良いし!」

「お前はアホや!」


「ちょっと!さっきから何?カンに触るんですけど!」


「アホな事を言うからや!鏡見てモノ言いや!」




「ムカつくっ!」

「トイレ行きや!」



「………………」



「な、何やねん!いきなりダンマリかいな?」

「…ありがとう…」


「は?」


「助けてくれて。ねえねえ、康ちゃん傘入れて♪」




「………………」



「…駄目?」


「さ、最初から、そう言えばええやろ?」


「そうなんだけど……」



「…不意打ち過ぎやろ…」




私に聞こえない声で言う康介君。




「えっ?何?何か言った?」 

「何も言うてへんっ!」



「…調子狂うわ…」


ポツリと呟くように言った。





「帰るで!」


「うん。やっぱり冗談ばっか言っても関西パワーで突っ込み入るからキリがないし適わないや」


「えっ?そりゃそうやろ?」




私達は色々と話をしながら帰る。





喧嘩したり


冗談言いあったり


気付けば


二人の時間が増えていた



二人で


笑いあって


バカしあって




もし付き合ったら


相変わらず


変わらないのかな?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る