第6話 仲間の為なら

ある日の学校帰り、私は街に向かった。


天気が怪しい為、先を急ぐ。


しかし、用事を済ませ帰ろうとした矢先、雨に見舞われた。




「ついてない…」

「ホンマついてへんなぁ〜。悠菜」



ビクッ


背後から声がし驚くも、バッと振り返る視線の先には康介君と亮平君の姿があった。




《やっぱり》



「日頃の行いが悪いんちゃうん?」


「康介君じゃあるまいし」


「何やと!?俺はちゃう!」


「えーっ?そう?どうだろう?」




ムニュと両頬を摘まれた。




「…痛い…」

「…ブッサイクな顔!」

「うるさいなー」



パッと両頬から手を離す。



「女の子に対して本当手加減ないんだから!第一、ブサイクな顔してるのは、そっちじゃん!」


「俺は、何もしてへん!」


「したじゃん!」



「はいはい。辞め辞め。二人は仲良いんだか悪いんだか」



亮平君が言った。




「「絶対に悪いっ!」」



私達二人は同時に言った。




クスクス笑う亮平君。



「それで仲悪いんだ」と、亮平君。


「真似すなっ!」と、康介君。


「そっちこそ!」と、私。




私達は睨み合い、そっぽを向いた。




「さあ帰ろ、帰ろ!」と、康介君。


「帰れ!帰れ!」と、私。



「悠菜ちゃんは?」と、亮平君。


「私は大丈夫!まだ、寄りたい所あるし」

「えっ?でも、もう遅いよ」

「本人が言うてるからええんちゃうの?」

「だけど雨は更に強くなるから帰った方が…」

「大丈夫だよ。ほら帰った、帰った。じゃあね!」



私は、そう言うと、二人に背を向け去り始める。




少しして――――



「かーのじょ」

「一人?」



声をかけられた。




「カラオケ行こうよ!」

「行きません!」



グイッと肩を抱き寄せられた。




「きゃあっ!やだっ!離してっ!」


「雨降ってるんだしさぁ〜、時間潰しなよ」




その時だ。



「その手、離してくれないかな?」



「あ?何だよ!俺達が先に声かけたんだからなっ!」



「俺達の連れやねんけど。許可なく連れて行かんといてな!」



康介君と亮平君だ。




「痛い目遭う前に失せなよ!」

「野郎っ!」

「カッコつけやがって!」

「二人は逃げて!」



そう言う亮平君。


康介君は、私の手をグイッと掴み走り出した。




「きゃあっ!」



《早っ!》



「野郎っ!」

「待ちやがれ!」


「俺倒して行きなよ!…つーか…大事な仲間に手ぇ出してんじゃねーよ!言ってる事、分からないわけじゃねーよな?」



「わ、わ、分かった」

「ヤベーよ!行くぞ!」



気付けば街から随分と離れていた。



「康介君…早すぎるよ…」

「俺、足には自信あんねん!」

「わ、私だって足には自信あるしっ!」

「自己満足やろ?」

「違いますっ!」



私達は騒ぐ。



「二人は本当、仲良いね!」


「うわっ!亮ちゃん!」

「亮平君!?大丈夫だった?」


「うん、大丈夫だよ。でなきゃここにはいないよ」


「確かに!」




グイッと私を引き寄せ、耳元で



ドキン


無邪気な亮平君から想像もつかない口調で囁かれた。



『大事な仲間を守る為なら体張って守んだよ。もう一人の俺でな。内緒な』




《嘘…亮平君…?》




「悠菜、顔赤いねんけど大丈夫か?」

「えっ?だ、大丈夫!」

「ちゅーか、お前も素直になりや」

「素直だし!」

「いやいや、もう少し素直になった方がええで」




私達は騒ぐ中、帰るのだった。





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