第2話 相合い傘

ある日、私は用事で一人街に出掛けた。


みんなとは別行動であり、バラバラな為、誰が街に出ているかも分からない状況であり、もしかすると私だけ街にいるとも考えられる。


一先ず、さっさと用事を済ませ帰りを急ぐ事にした。


用事が済んだ所で、帰ろうとした時、雨が降っている事に気付く。


街は、アーケードで屋根があるものの寮までの距離は傘が必要だ。




「………………」



様子を見るものの一向に止まない雨。


そして、私の携帯が鳴った。




「もしもし?」

「悠菜ちゃん?私だけど、今、何処にいるの〜?」



栄次さんからだ。



「今、街です」


「一人?」


「はい」


「そうなのね。今、寮には悠菜ちゃんと康介君以外はみんな勢揃いなんだけど〜、迎え寄越そうか〜?」


「そうなんですね。いいえ。申し訳ないので大丈夫です。雨も降っているので、傘買って帰ります」


「一人で大丈夫?」


「はい」


「そう?じゃあ、気を付けて帰るのよ〜」


「はい。分かりました。すみません」




その直後だ。



「ねえ、彼女、何してんの?送ってあげようか?」

「いいえ!大丈夫です!」



と、振り返りながら言う私に対してペシッと何故か、おでこを叩かれた。



「いったっ!」

「何が大丈夫やねん!」

「うわっ!康介君っ!?」


「栄次さんから連絡あって俺達以外は、みんないるって話やないか!」


「うん。そうみたいだね」


「帰るで!」


「あっ、うん。それより一人で珍しいね」


「えっ?」


「だって、竜神君と亮平君と一緒にいるイメージあるから」


「あー、確かに仲良いねんけど、今日は各々用事あって別行動やってん」


「そうだったんだ」


「お前は一人寂しく、街散策ですか?」


「うん。用事で一人寂しく散策」


「何かあったらどないすんの?」


「大丈夫だよ」


「大丈夫やない!街に行く位、誰かに声掛けた方がええよ」


「でも、一人の時が気楽の時もあるだろうし、それにみんな色々と用事あるわけだし」


「せやけど言ってもらった方が気にかける事は出来るんやし、何かある前に防げるかもしれへんやん?」


「それは…そうだろうけど…」


「女の子は悠菜ちゃん一人なんやし、俺達に遠慮せんと何でも気軽に頼りぃ」


「うん、ありがとう」


「みんな協力してくれるで」


「うん」




とは言ったものの頼み辛いのが私の本音だ。


確かに、寮生だし、女子は私だけで、学校に女子がいるとしても、ほとんど交流がない。


気持ちは凄く嬉しいんだけど…



私達は色々と話をしながら相合い傘で帰る事にした。


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