第4話 街の散策

ある日の放課後の事だった。


正門を出て寮と逆方向に行こうとした時だった。



「悠菜ちゃん」

「あっ!恭吾君」


「街に行く感じ?」


「うん、ちょっと用事あって。あれ?でも良く分かったね?」


「寮とは逆方向に向かってるから分かるよ」


「あ、そうか。それもそうだね」


「一人で大丈夫?」


「うん。大丈夫だよ」


「そう?」


「うん」


「じゃあ気を付けてね」

「うん。行って来ます!」



私達は別れるものの恭吾君は、こっそりついて来てくれていた。



「あっ!この洋服可愛い♪」



《そういえば、こっちに来て私ショッピングしてないかも…》




ショーウィンドーの洋服に目が止まる私の姿を見つめる恭吾君。



「悠菜ちゃん…そういえば休日も一人で過ごしてるんだっけ?」




次は本屋さんだ。



「あー、もう少しなのに…」



そして、何とか欲しい本が取れたのと同時に他の本がいくつか落ちてしまった。




「クスクス…無理して取ろうとするから」



恭吾君はバレないようにする中、その光景を見ては笑っている。


私は、そんな事も知るよしもなく会計をする事にした。




会計を済ませ外に出ると――――



ドンッと私は誰かとぶつかってしまった。




「ってー」

「す、すみません…」



謝った視線の先には他校生の数人の男子生徒だ。



「何処見て歩いてんだよ!」

「す、すみません」

「あれ?つーかさ…その制服って…?」

「あー、今年から共学になった所じゃね?知り合い言ってたし!」

「じゃあ、学校のマドンナ的存在?」


「君も可愛いし案外モテモテでやる事やってる感じ?」


「えっ?ち、違います!」




グイッと肩を抱き寄せた。



「や、やだ離してっ!」


「ねえねえ、俺達に付き合ってよ!」

「暇してんでしょう?」


「もう帰るんです。だから付き合えません!」


「良いじゃん!」

「少し位さ〜付き合ってくれても」

「そうそう」



私は押し退けようとするがかなわない。



「ねえ」


「何だよ!」

「誰、あんた!」



誰かが私達の会話に割って入るように声をかけてきた。



「彼女離してあげなよ」


「うるせーな!」

「こんな奴、放って行こう!」

「そうそう、行こう、行こう!」

「や、やだ!」



私達の間に割って入る人影。


男の人?


高校生位?


私は誰か分からずにいた。




「何だよ!どけよ!」

「どくわけないよ」

「野郎っ!」




相手が襲い掛かってきた。



バックで相手のパンチを受け止めると同時にバックでドミノ倒しのように、二人纏めて押し退け地面に倒れこんだ。



「…っ…」



私の手を掴み帰り始める。



「す、すみません…ありがとうございます」

「大丈夫?」

「はい…」


「敬語じゃなくても大丈夫だよ。悠菜ちゃん」



クスクス笑いながら振り返る相手は恭吾君だった。




「恭吾君!?」



その直後だ。



「悠菜ちゃん、ちょっとごめん」


「何?」


「…俺の荷物預かって離れててくんないかな?」



ドキン


「えっ?」



《…一瞬…変わった?》



「俺…ちょっと本気出すから」


「えっ?本気?」



《気のせい…じゃ…ない…よね…?》



「野郎ーーっ!」




ビクッ


背後から声がし驚く中、さっきの一人に続いて彼等が襲い掛かって来た。




ドカーッ



ドサッ



ドサッ




足で蹴っ飛ばすようにすると彼等を倒した。



「しつこすぎなんだけど!?」



「………………」




《恭吾君じゃないみたい…》



「そのまま引き下がって帰れば痛い目遭わずに済んだのに!」




「………………」




《…嘘…》




「ち、チクショー!」

「覚えてろよ!」



彼等は走り去った。



「…ごめん…ありがとう」

「う、ううん…」



私に預けた荷物を受け取り、帰り始める恭吾君。



私は、恭吾君の豹変ぶりを目の当たりにしてしまい驚く中、動けずにいた。



「悠菜ちゃん?」



私が来てない事に気付き振り返る恭吾君。



「…あ…ごめん…」と、私。



歩み寄る恭吾君。




「悠菜ちゃん…ごめん驚いている感じだね。もういつもの俺だから安心して」


「…う、うん…」


「とは言っても整理出来てない感じだね。…分かった」


「えっ?」




フワリと優しく抱きしめた。



ドキーッ



「!!!」


「悠菜ちゃん、安心して。俺は女の子を守る為にしか本気は出さないんだよ。さっきの俺は滅多に出ないから怖がらないで。さあ、一緒に帰ろう!悠菜ちゃん」



私は恭吾君を抱きしめ返した。



「気が済むまで抱きしめててあげるよ」

「街のど真ん中だから恥ずかしい…」

「じゃあ、手つないで帰ろう!」



顔を上げると私を上から見下ろす恭吾君の眼差しがいつもと変わらない事に気付く。


背の高い恭吾君から見つめられると凄く恥ずかしくなる




「可愛い♪」

「えっ?」

「可愛いすぎてキスしたくなる♪」

「恭、恭吾君っ!」


「クスクス…さあ帰ろう!」

「うん、そうだね…」




恭吾君はさり気なく私の手を優しく掴み、私達は手を繋いで帰る事にした。





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