第6話 もう一人の彼あらわる

そんなある日の事、事件は起きた。


正門を出た直後の事だった。




「あっ!いたいた」



グイッと誰かが私の肩を抱き寄せた。



「きゃあっ!」


「君が亮平の彼女?」


「彼女?えっ?何の事でしょう?私と亮平君は、そんな関係じゃありません!」


「でも、いつも一緒にいるんでしょう?」


「友達とクラスメイトなだけです!」


「とにかく付き合ってよ!」


「お断りします!」




私は抱き寄せられた肩の手を離し帰り始める。



しかし強制的に連れて行かれる。


向かった先は、とある廃墟ビルだった。

両手は後ろ手で結ばれている。




「ちょ、ちょっと!なんなの?」


「ごめんね〜。前に俺の友達がお世話になったみたいでさぁ〜」


「そうなんですか…。それで私と何の関係があるんでしょうかっ!?」


「君は人質」


「人質っ!?」


「仲良しみたいだし」


「あー、そういう事ですか…。だけど来ないと思いますよ?だからロープ解いて……」



「悠菜ちゃん!」


「亮平君!?」


「アイツが来ないわけないじゃん!アイツ、こういう事されんの嫌いだからさぁ〜」




「………………」



「彼女、解放してくれないかな?」


「無ーー理ーー!」



「………………」



「亮ちゃん元気そうじゃん!ねえ、亮ちゃん彼女と寝たの?」


「ちょっと!変な事言わないでよ!私達はそういう関係じゃないんだから!」


「友達でもヤる事やるでしょう?男と女なんだし。しかも、これだけ可愛いならヤらなきゃ損でしょう?」


「あんたの頭ん中、そういう事ばっかりなんでしょう?あんたみたいな奴、大っ嫌い!」




ドサッ

押し倒された。



「や、やだっ!辞め…」




首筋に唇を這わす。




「い、いやぁっ!」




少し乱れた制服から手がスルリと入り込んでくる。



「い、嫌ぁっ!触んなっ!」



抵抗し暴れる私の足が相手の股間に当たったようだ。




「…つ…」



私は慌てて逃げる。




「悠菜ちゃんっ!」


「亮平君っ!」




私を背後に隠すように私の前に立ち塞がる亮平君。



「大丈夫?」


「…うん…ロープで自由利かなくて痛いけど…」



「亮ちゃーん。彼女、返してよ」


「返してよって…渡すわけねーだろ?」




ドキッ



「………………」




「じゃあ力づくでも彼女返してもらって楽しい事でもしようかな〜?ねえ、彼女」


「…悠菜ちゃん…俺…本気出さなきゃ君を守れないみたいだからマジになるよ」


「…えっ…あ…うん…」




「…彼女は渡さないよ!…つーか…彼女に何かあったらみんなが黙っていないからっ!」



「…亮平君…」


「…俺から離れてろ!」




ドキン



《亮平君が…変わった…》




亮平君は襲い掛かって来る人達を倒していく。




「相変わらず強いよなぁ〜。今日の所は帰ってやるよ!亮ちゃん」




そう言うと彼等は帰って行く。



「ふー…さあ帰るよ…悠菜ちゃん」

「…うん…その前にロープ…解かなきゃ…」


「そのまま帰れば?」

「えっ!?そのままって…」



クスクス笑う亮平君。


クルリと私を回転させ後ろ手に結ばれているロープを解いていく。


私の胸は何故かドキドキと加速する。



すると、フワリと背後から抱きしめられる亮平君。




ドキッ




「…亮平…君…?」

「巻き込んで…ゴメン…」


「亮平君、大丈夫だよ。ていうか来てくれるなんて思わないから逆に驚いたんだけど」


「悠菜ちゃんは寮生だから何かあったらみんな心配するから」


「そっか……」


「それより…目のやり場がないんだけど?」


「えっ?」


「制服」


「えっ?あー…色気ないでしょう?」



「………………」



「口では簡単だよ。悠菜ちゃん」


「えっ?」



振り返らせる亮平君。



「亮……」




ゆっくり顔を近付いてくる。




《えっ!?ちょ、ちょっと!亮平君!?》



ドキッ


亮平君は私の耳元で囁く。



「普段の俺じゃないなら完全に襲ってるけど?」




ドキッ


そして首筋に唇を這わせた。




「……!!!」


「制服整えなよ。それとも……ここでヤっとく?」



サラッと恭吾君が言いそうな言葉をストレートに言ってきた。


そう言うと、顔を近付けてきた。



「ちょ、ちょ…亮…亮平君っ!」



クスクス笑う亮平君。



「帰るよ。悠菜ちゃん」






二人の彼に想像がつかない


先が詠めない彼に


私の胸が一気に虜にさせた



好きになりそう……



無邪気なあなたと



もう一人のあなたに……





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