第5話 もう一人の彼
数日後の放課後、私は街に行こうと街の方へと向かっていた。
「悠菜ちゃん」
背後から名前を呼ばれ振り返る視線の先には亮平君がいた。
「亮平君」
「街に行くの?」
「うん。用事あって」
「俺も一緒に良い?」
「うん、別に良いよ」
「ありがとう!」
ドキッ
無邪気な笑顔を見せる亮平君。
「お礼は良いよ」
「そう?彼氏じゃないのに?」
「彼氏いないから大丈夫だよ。亮平君なら許す。寮生だし」
「そう?」
「うん。そういう亮平君は私と一緒にいて良いの?」
「えっ?どうして?」
「いや、カップルに見られる位の私達だし」
「気にしないよ。悠菜ちゃんだから許す。寮生だから」
「えっ?」
「なーんて!」
スッ
ドキン
私の手を握ると手を繋ぐ。
「手繋ぎデートする?途中まで」
ドキン
私の胸が大きく跳ねる。
「えっ?」
「…その反応可愛すぎだから悠菜ちゃん。元々可愛いんだから更に可愛くなるからキスしたくなる」
ドキーッ
更に、亮平君の一言に再び胸が大きく跳ねた。
「りょ、亮平君!恭吾君みたいな事、サラッと言わないでよ!」
クスクス笑う亮平君。
「本当、悠菜ちゃん、恭ちゃんに弄られてるよね?反応可愛いからじゃないかな?彼女だったら一緒にいたい思わせるから手放したくない存在だよね?一人占めしたい感じ」
「えっ?」
私達は、色々話をしながら街に行く。
「じゃあ後でここで待ち合わせしようか?」
「うん」
そう言って私達は一旦別れ別行動をした。
私は色々なショップを回っていた。
お互い好きな事で時間を潰す。
そして、気付けば薄暗い時間帯になっていた。
「ヤバ…すっかり時間が…亮平君、もう来てるよね…?」
しかし、まだ、亮平君の姿はなく待っている時の事だった。
「彼女、何してんの?」
他校生の男子生徒から声をかけられた。
《どうしよう?亮平君…》
「彼女、一人?」
「いいえ」
「待ち合わせ?」
その時だ。
「彼女に何か用?」
「亮平君」
私は亮平君の方に行こうとしたが腕を掴まれた。
「きゃあっ!」
「悠菜ちゃん!」
「俺達が先に声をかけたんだから駄目ー!」
「彼女は、俺の連れなんだけど?」
「んな訳ないじゃん!」
「一緒にいなかったんだから」
「は、離してっ!」
「彼女を放置している彼氏が悪いんでしょう?」
《彼女?彼氏?えっ!?そういう関係に見えちゃう?》
「別に放置していた訳じゃないし。ここで待ちあわせしていたんだけど?」
ドンッ
私は相手を押し退け亮平君の元へと行くと私を背後に隠すようにした。
「大丈夫?」
「…うん…」
「彼女、こっちに来なよ〜」
「やだ!」
私達に歩み寄る彼等。
私の手を掴もうとしたのに気付いたのか相手の手を掴む亮平君の姿。
「な、何すんだよ!離…」
グイッと相手の手を捻り返した。
ドキッ
普段の亮平君以外な光景に胸が大きく跳ねた。
「…っ…」
相手が、苦痛に歪んだ顔をする。
「や、野郎…」
「俺が本気になる前に行けよ!…それとも…痛い目に遭いたいわけ?それが望みなら相手になっても良いけど?どうすんの?あんたら!」
ドキン
《嘘…亮平…君…?》
無邪気な彼から想像つかないドスのきいた声。
私は驚く中、彼等はヤバイと思ったのか逃げるように去った。
「全く…ごめん…悠菜ちゃん。何もされなかった?」
「あ、うん…大丈夫。…ありがとう…」
《いつもの亮平君だ…じゃあ…さっきのは…?》
《でも…》
「じゃあ帰ろうか?」
「うん…」
帰り始める亮平君。
私が来ていない事に気付いたのか足を止め振り返る。
「悠菜ちゃん?」
「えっ?」
「大丈夫?」
「うん」
「………………」
グイッと抱き寄せた。
ドキン
「悠菜ちゃん…気になる事ある感じ?」
「えっ?」
「俺の事。驚かせてごめん」
「…亮平君…」
「今はまだ言えないけど…怖がらないで」
《亮平…君…私が考えている事、感じてたんだ》
抱き寄せた体を離し、私の両頬を優しく包み込むように触れ、優しい眼差しで見つめた。
ドキン
「俺は俺だから。悠菜ちゃんは女の子なんだから君に何かあったらいけないから一緒にいる時は君を守らせて」
ドキン
《ただの寮生なだけなのに…》
《特別扱いしないでよ…好きになっちゃうじゃん》
「…亮…平…君…」
私は亮平君を見つめた。
「………………」
パッと離す亮平君。
「ごめん…えっと…」
亮平君は顔をそらした。
良く見ると亮平君の顔が赤いようにも見える。
「か、帰ろう!」
「う、うん…」
私は亮平君の手を掴む。
「悠菜…ちゃん…?」
「繋いで…良い?」
「…それは…良いけど…」
「…可愛いすぎだろ…」
私に聞こえないようにポツリと呟いた。
「えっ?何?」
「な…何でもない!」
〜 亮平 side 〜
彼女がいつも以上に可愛く見えた
普段から可愛い彼女は
誰からも愛されている
みんな彼女が可愛くて
つい意地悪したりしているのは知っている
そんな俺は
まだ
彼女には言えない秘密があった
俺がもし彼女に
本気になった時
その秘密を話す瞬間で
全ての俺を受け入れてもらいたい
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