第3話 あなたの笑顔に

ある日の放課後。



「木更木、木更木はいるか?」



担任の先生が亮平君の事を尋ねるように呼んでいる。



「アイツなら、さっき帰ってましたよ」



クラスの男子生徒が先生に言った。



「そうか…。あっ!春日いるな。同じ寮だったな。申し訳ないが、木更木に、渡しておいてくれないか?」


「はい、分かりました。渡しておきます」


「すまない」


「いいえ」



先生は、私に封筒に入った何かの書類と思われるのを渡した。




―――その日の夜。



「たっだいまーーっ!」

「お腹すいたーーっ!」



亮平君と康介君が帰宅してきては、リビングに来る。




「おかえり。相変わらず寄り道コース?」


「せや」


「そうだよ。悠菜ちゃんも、また、行こうね!」


「うん、そうだね?また、誘ってね。あっ!亮平君に渡して欲しいって先生から預かった書類みたいなものがあって後で持って来るね」


「そうなんだ。良いよ。後で、悠菜ちゃんの部屋に俺が寄るから」


「そう?」


「うん」


「分かった」




そして、後で、亮平君は私の部屋に立ち寄った為、書類を渡す。



「ありがとう!」



ドキン


無邪気な笑顔に私の胸の奥が小さく跳ねる。




《うわぁ〜…亮平君って笑顔が超可愛い♪》

《その笑顔…ズルイ…》



「いいえ」



私は亮平君を見つめた。



「何?」



ドキッ


「う、ううん。な、何でもない」

「そう?じゃあ、俺、部屋に行くね」

「うん」




《亮平君…昔からあんな感じで変わらないんだろうなぁ〜…》





数日後の放課後――――




「悠菜ちゃん、ちょっと付き合って欲しいんだけど都合悪い?」


「大丈夫だよ。今日は康介君と別行動なの?」

「うん。康ちゃん、用事があるって」

「そうか。彼女とデート?」


「彼女?そんな様子はなかったけど、まあ、康ちゃんカッコイイから、いてもおかしくないかもね」


「亮平君もカッコイイよ」


「えっ?」


「モテてたんじゃないの?」

「いや、モテてないから」

「嘘だ!」

「本当」

「そうなの?」

「うん」



私達は色々、話をしながら街に向かう。



亮平君の用事に付き合う中、用事を済ませた帰り。



「ごめんね。付き合わせて」

「ううん、大丈夫だよ」



その時だ。




「あれぇ〜?亮ちゃんじゃん!」



「………………」



「女連れてさぁ〜、モテる奴は違うねぇ〜」



「…面倒な奴等に会ったし……」



私に聞こえるか聞こえないかの声で言う亮平君。




《過去に彼等と何かあったのかな?》




「ねえねえ、彼女、俺達と遊びに行こうよ!」

「つーか、可愛い系じゃね?」

「彼女、モテるでしょう?」

「いいえ」


「つーか、亮ちゃんの通う高校って男子校じゃなかったっけ?」


「何で女子いんの?」


「4月から共学になったので…」と、私。


「そうなんだ!」

「こんな可愛い子いるなら俺達も転校して来ようかな?」



「帰ろうっ!悠菜ちゃん!」



亮平君は、私の手を掴み歩き始める。



「悠菜ちゃんって名前なんだ〜」



そう言って私達の行く道を塞ぐ。



「悪いけど俺達、帰らないといけないから相手してる暇ないんだ!通してくれないかな?」


「そう言うなって〜」

「良いじゃん!」




「……………」




「はいはい、分かりましたぁ〜」

「通しますよ〜亮ちゃん」



そう言うも襲い掛かって来た。



スッと交わす、亮平君の姿。

バランスを崩す相手。



「って〜!」

「野郎っ!」



亮平君が足を出し、再び地面に倒れこんだ。



「チクショーっ!覚えてろよ!」




彼等は逃げるように走り去った。




「ごめん…悠菜ちゃん帰ろうか?」

「うん…」


「悠菜ちゃん、彼等…また来るかも…」

「えっ?」

「気を付けて行動して」

「そっか…分かった…」



私達は帰る事にした。






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