第10話 全滅への出撃

 勢ぞろいしたギルドメンバーたち、このまるで初めての大きなイベントの前の様な高揚した空気、無傷のラキア王国……。 


 ここに来てやっと俺は気づいた。 

 どうやら、時間がそっくり巻き戻ってしまっていたのだと。

 その瞬間、俺の脳裏には《ラタイアイ平原の決戦》で皆が全滅した光景がうかんだ。


「はやくブレウスと集合するわよ」


 セフィナは呑気に言った。ただ、俺がするべきことは一つに思えた。


「そうだな、はやく出発を止めなきゃいけねえ」

「止めるって、何?」


 困惑するセフィナを横目に、俺は《加護》を発動させる。


「【リピー】」


 そう呟くと、突風が俺の後ろから巻き起こり、そのまま俺の身体を空中に吹き飛ばした。

 もちろん俺が飛ばされていく先は、まさにこのギルドメンバーたちを死地へと出発させようとしていた〈ギルドマスター〉ブレウスに決まっていた。 


「うわあああああああああ」


 ―――ドン!!!!

 俺は大声と大きな衝撃音とともに、軍団の最前列にいたブレウスの目の前に着地した。


「うわあ……アレスか。びっくりしたよ」


 ブレウスは呆れたような目で俺を見た。近くにいたギルドメンバーたちはポカンと口を開けている。


「遅かったじゃないか、また寝坊かい」

「いや、そういうんじゃなくてな」

「こういうときにはホントお前の加護は役に立つね」


 ブレウスはクスりと笑う。だが今はそれどころじゃないんだ。


「そんなことはいいんだ!」


 俺はブレウスの両肩を掴んだ。傍から見れば、遅刻を必死に誤魔化そうとしている情けないやつだが、気にしていられない。


「どうしたんだい」


 両眉をハの字にさせながらも彼は冷静だ。

 だがこれを言ったら冷静ではいられないだろう。

 俺は大きく息を吸ってから言った。



「このままじゃ今日、俺たちは全滅する!」

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