第12話

ボールド達冒険者と別れて、ダンジョンに向かうことにした。

俺達はとりあえずこのまま進み、アリアさんのレベルアップを図ろうと思っていたが、さっきレベルアップしてしまったので、モンスターを倒してレベルがまた上がっても嫌だなー…。

と思いつつもアリアさんのレベルを上げるために仕方ないと考え直してダンジョンの前に立っている。


『アリアさん。それじゃあダンジョン入りますけど、レベル上がったらすぐに撤退しますからね』

『うん。わかってるわ。それにスキームさっきレベル上がったんでしょ?くる意味なくなっちゃったわよね…。私一人で行こうか?』


アリアさんは、俺の様子を見て気にしてくれているようだった。これは申し訳ない。


『いやいや、レベルアップしたのはたまたまですし、レベルアップできないよりは良かったですよ。それに今回は、アリアさんのレベルアップも目的としてきていますので、自分が済んだから後宜しく!なんて酷いことしませんよ』

『良かった。なんだか悪い気がしてさ。ありがとう。じゃあ宜しくね。先生』


それを聞き、安堵した様子でアリアさんは答えた。

ダンジョンは先程の出来事がなかったかのように静かだ。


『はい。それでは参りましょうか。アリア君』


少し調子に乗って偉そうに返す。


『はい!先生!しゅっぱーーつ!』


満面の笑みで答えてくれるアリアさん。ノリが良くて良かったよ。

とりあえず、そのまま俺達は進んで行った。

薄暗い洞窟を進み、警戒しながら進んで行く。

すると以前にゴブリンと遭遇した広めの空間の入り口が見えてきた。

中からはモンスターの声が聞こえてくる。


『グギャギャギャ!』

『グギャ!』


これは以前来た時も遭遇したゴブリンの様だ。やはり先程のレッドオーガのことがなかったかの様に、ゴブリンも過ごしている。

しかし、今回は違ったことがあった。奴らは何かに集っているようだ。


『アリアさん。ゴブリンの数は上位種が2匹と、ゴブリンが6匹ですね。やれますか?』

『うーん。どうだろう。数は多いし。上位種がいるから微妙なところね』

『そうですか。じゃあ何匹か俺が請け負うんで、どのくらい…』


と話していると、ゴブリン達が集っているところに人間の足の様なものが見えた。

それと同時に込み上げてくるものを感じた。


『うっ…』

『スキームどうしたの?ってあれは…』


俺の様子を心配しつつ、アリアさんもゴブリンの所に人の足があることに気がついた様だ。

先程のレッドオーガ騒ぎの殿を務めた冒険者だろうか…。

さすがに生存はしてないとは思うが、亡骸をあのままにしておくわけにはいかないな。

吐き気はあるものの、グッと堪えて目の前の対処を考える。


『アリアさん。奴らを気絶させるんで、殺して下さい』

『う、うん。スキームがやっちゃって…』


アリアさんの返答を待つ前に、ゴブリン達の顔面を空間魔法て覆い、酸素濃度を6%まで下げる。

するとゴブリン達は突然気絶した。


『俺はあの人…。もう一人いる!位置交換!』


俺は二人を自分のそばに位置交換で寄せて、状態を確認する。


『アリアさん。そっちをやっといて下さい』

『う、うん。わかったわ』


俺の剣幕に驚きながらも、応じてくれた。

二人の状態を見ると、男性と女性で、女性の方はかなり弱っているが、呼吸をしていた。

男性は呼吸をしていない。脈もないか…


『胸骨圧迫開始します。1.2.3....30』


30対2の割合て胸骨圧迫と、気道を確保して風魔法で換気を繰り返し行うが、反応が見られない…


『クソッ!帰ってこい!ライトニング!』


俺は両手の平に雷魔法を纏わせる。そして右前胸部と、左胸横の肋骨にあてがう。

すると男の体が跳ねる様にのけぞった。


『ゴホッ!ゴホ…』


よし。自発呼吸も自己心拍も再開した。橈骨で脈が触れるから80はありそうだな。

後は治療だ。探知で身体の隅々まで状態を確認する。

血流が停滞していたことでいくつか血栓が見つかった。位置交換で手の甲の血管あたりの静脈血と交換して、手の甲を風邪魔法で傷つけて血栓を排出する。

そして自分の右手に光魔法のライトヒール、左手水魔法のアクアヒールを展開して、治療を開始する。

すると逆再生するかの様に身体の傷が塞がって行く。

女性も同じように回復させる。


『ふぅーっ!間に合ったーっ!ていうか回復魔法の効果ぎエグいな』


今まで俺は大怪我なんかしたことがなかったから、こんな大怪我も治るなんて、びっくりだな。

魔法スキルのレベルなんて意味あんのかな?

効果範囲が広くなるとかなのかな?


【あんたの治す知識が、こちらの人族達と認識が違うからよ。こちらの人達じゃこうはいかないわよ】


おっ!ステさんお久だね!なかなか最近は出てきてくれないから、見放されたかと思ったよ。


【あんたが私になにも聞いてこないからよ。いつも聞き耳立ててるわよ】


聞き耳ね。俺は特に喋ってないから、思考を読むの間違いでしょ?俺のプライベートとは…


【その辺は、まぁ空気を読んでらつもりよ。ずっと付きっきりってわけじゃないわ。たまたま今回はあなたの行動を注視してただけよ。それと今回のそれはこちらの人族達には黙ってた方が良いわね。厄介事に巻き込まれるわよ】


厄介事は嫌だけど、必要な時は使うよ。はぁ〜。嫌だな…


『スキーム!終わったわよ。二人はどうだった?』


ゴブリン達を始末し終わったアリアさんが帰ってきて、尋ねてきた。


『無事二人とも、助けられましたよ。アリアさんもありがとうございました』

『あの状態から助けられたの?凄いわね。一人は完全に死んでたと思ったわ』


アリアさんはびっくりした様子で答えた。


『そうですね。確かに死にかなり近い状態だったのは確かですね。でも助けられたので良かったです』

『ええ。そうね。助かるとは思わなかったけどスキームだものね』

『うん?俺だとなんかあるの?』

『いや、特にないわよ!ふふっ』


何やら変な誤解がありそうだが、それよりもレベルアップは出来たのだろうか?

この人達をこのままにして行くわけには行かないからな。


『アリアさんレベルアップはできましたか?』

『ええ。出来たわよ。あの状態のモンスターを倒してレベルアップするのも気が引けたけど…』

『そうですか。おめでとうございます。今回はしょうがないというか…。この人達このままだとまずいんで、予定も済んだし帰りましょう』



そして二人を担いで町に帰ることになり、アリアさんは女性を、俺は男性を担いで町に帰った。


『おい!お前たちそこで止まれ!』


町の前に着くと門は閉まっており、門番をしているおっさんに止められた。


『すみません。ダンジョンで重症の冒険者を見つけて連れて帰ってきたのですが、中に入れていただけませんか?』

『何?ちょっと待ってろ!


それから数分後に門が開き、門番は副ギルド長を伴い帰ってきた。


『スキーム様。重症の冒険者を見つけたとのことですが、ボールド達と一緒に行った冒険者ではないでしょうか?殿を務めてレッドオーガにやられたと伺ってたのですが』

『はい。多分その方達で間違いないかと思います。ゴブリンの餌になるところを偶然発見したので、助けてきました』


副ギルド長は怪訝な顔しながら、俺達に近寄って来て、冒険者を確認した。


『間違いないですね。ボールド達と共にダンジョンに行った冒険者のクレオとサーヤですね。しかし、ダンジョンで手酷くやられていると思ったのですが、身体はとても綺麗ですね』


副ギルド長は冒険者が無事な様子を見て安堵の表情を浮かべ、身体に傷がなく、綺麗なことに気付いて、また怪訝な表情を浮かべる。


『治療は向かうでしましたから、装備はボロボロになってますけど、身体は元通りのはずですよ』

『治療ですか…。回復魔法でしょうか?』

『そうですね。少し特殊な方法ですけど…』

『属性はなんでしょうか?』


副ギルド長は凄い勢いで聞いてくる。凄く興奮気味だ。しかし、ステさんの言う通り厄介そうだな。

とりあえず二人を休ませてあげないとな。


『えっと…、とりあえず二人を休ませてあげませんか?』

『す、す、すみません!すごく気になってしまって…。申し訳ないです。すぐに参りましょう。ギルドに簡易宿泊所がありますので、そちらに休ませましょう』


そして、二人を連れてギルドに行き、二人を休ませた。俺達も訓練からのダンジョンで、疲れてるから帰してもらえると良いけど…








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る