第11話

昼も食べ終わり、早速午後からの訓練を始めるためにギルドの訓練所に戻ってきた。

じゃあ今度こそ訓練だ。

正直朝のは訓練のうちには入らない…


『さっ。午後からも頑張りましょう!アリアさん準備はいいですか?』

『はーい。午後はなにやるの?』


昼ご飯を食べて少しお眠な様子、アリアさんのペースでやっていると自分がいつまで経っても訓練できないので、まずはアリアさんには午前にできなかったストレッチとランニングをしてもらう。もちろん魔力循環しながらだ。


『朝できなかったことをやって下さい。僕もとりあえず同じことをします』

『え?あれやるの?厳しいんだけど…』

『限界は自分で決めるモノじゃないですよ。こっちがダメかどうか判断しますので、とりあえず始めて下さい』


訓練を始めたというか、準備運動だ。とりあえずストレッチを入念に行い、身体の隅々まで伸ばしていく。

アリアさんと一緒にランニングを始める。

俺はアリアさんと同じメニューでは訓練にならないので、内側と外側の魔力操作・循環をしながら尚且つ、自分の前から嵐のような向かい風を作り出しランニングする。

途中で風の勢いを強くしすぎて、アリアさんを吹き飛ばしてしまったが、怪我する前に助けられて良かった。


『スキームの訓練は常軌を逸してるわね…』

『なにを言ってるんですか。アリアさんもアレくらいはやってもらえるようにならないと、強くなれませんよ?』

『そ、そうよね…。私は強くなるって決めたんだわ。頑張る…』

『頑張りましょう』




そして、訓練を始めて一ヶ月が過ぎたあたりで、アリアさんのステータスがカンストした。


ステータス

名前 アリア・フォン・アカリメ

種族 人族 年齢 16 レベル 1

HP 999

MP 999

筋力999 丈夫さ999 素早さ999

賢さ999 精神999 器用さ999 運 100

スキル 

ステータス閲覧 礼儀・作法 剣技Ⅰ 盾術Ⅰ

魔力操作・循環 並列思考 身体強化 属性強化

立体起動

魔法(生活、風、水、空間)Ⅰ


称号

お転婆姫(家臣から逃げる時にステータス小補正)

気狂いドMの弟子(筋力、丈夫さ、素早さの値上昇補正)


『やったわ!ついに!ついにきたーーーー!』


アリアさんはガチャ回して、レアなキャラを引き当てた時バリにガッツポーズ取ってる。格好はかなりボロボロだ。これが姫様とは思えない…

この一ヶ月でかなり扱いたので、辛そうだったが、アリアさんのために心を鬼にして鍛えた。


『やりましたね!お疲れ様です。これでやっとダンジョンに入れますね』


という俺も実は一昨日にステータスはカンストした。


ステータス

名前 スキーム

種族/人族 年齢 7 レベル 2

HP 999+α MP 999+α

筋力999+α 丈夫さ999+α 素早さ999+α

賢さ999+α 精神力999+α 器用さ999+α

運100+β

α=999 β=100

・スキル 

ステータス閲覧 言語理解

ユニークスキル無詠唱

魔力精密操作・循環Ⅱ 状態異常耐性Ⅰ

自己再生Ⅱ 並列思考 気配遮断 身体強化 

属性付与 探知・索敵 立体起動 格闘術Ⅰ

魔法(生活、火、水、風、土、氷、雷、光、闇、空間)Ⅱ 消費MP本人依存

・ユニークスキル 

位置交換Ⅴ(消費MP5〜100)(自身から半径10メートル以内で有ればどこでも位置交換可能。交換には具体的なイメージが必要、最大で三つまで)

ステータス対話 幸運

・称号

気狂いドM(訓練により筋力・丈夫さ・素早さ値上昇補正)

初めてステータスと対話した者(ステータスと対話が可能になる)


『やったわ!これでレベルを上げられる。スキーム早速ダンジョンに向かいましょう』

『そのまま行くんですか?俺は構わないけど、かなり際どい格好してますよ』

『え?そ、そうね。最近訓練しすぎて感覚がおかしくなってたわ…。着替えて向かいましょう』


今はもう日が暮れる頃、もうすぐ夜になるが、訓練の成果を試したいという気持ちはよくわかる。

アリアさんの気持ちをかってダンジョンへ向かうことにした。この時間だと、帰ってくるのは難しそうなので、屋台屋なんかで買い物なんかは買い込んで向かうことにした。

ちなみにアリアさんの空間魔法は俺が教えた。

あと立体起動は空間魔法で足場を作り、風魔法を応用して、あの巨人と戦う兵士たちをイメージして、訓練のしていたら覚えたスキルだ。

生活魔法はかなり有能で、身体を綺麗にするなどの生活に役立つスキルだ。

汗をかいた俺にアリアさんがかけてくれて、とても重宝したので教えてもらった。

格闘術は知らない間にスキルがついていたので、なにがきっかけだったのか分からん。謎だ…

それから30分ほどで準備を終えたアリアさんが戻ってきたので、ダンジョンへと向かうこととなった。


ダンジョンの前に到着すると、冒険者達がなにやら騒いでいるのが、聞こえてくる。


『おい。あいつらはまだか…。もうダメかもしれないな』

『馬鹿言え、ギルドに救援を頼んだんだ。救援がくりゃあいつらだってなんとかなるはずだ』

『もってればの話だろ…。もうダメだろう…。まさか、上層にあんなモンスターがいるなんて…』

『だから私は言ったでしょ。初めから上位種が出るようなところは危ないって…』


冒険者達は顔色を悪くしながら、何やら起こったであろうことを話している。


『スキーム…。なんかやばそうな雰囲気だけど、どうする?』

『うーん。確かにな…。面倒な雰囲気がヒシヒシと伝わってきてるよね。アリアさんはあの人達は知らない人ですか?』

『え?うーん。何度か顔を合わせたことがある程度の人達しかいないわね…』

『そうですか。話だろだけでも聞いてみます?』

『うん。そうしましょ』


そう言って、何やら沈鬱の表情の冒険者達の元へ歩いて行く。


『おっ!救援か?ってガキと女か…。このダンジョンは危険だ。やめときな』


と、手前にいた冒険者が俺たちを見て勘違いしたかと思うと、違うと理解したのか止めるように勧めてくれる。

うん?この人アリアさんのこと教えてくれた人?冒険者だったのか?

まぁ都合がこっちの方が良いか…


『そうなんですね。ところで先日はありがとうございました』


冒険者らしき人物は、礼を言われて疑問に思うような表情した後、何か気付いてかのようにハッとした。


『うん?あっ!あの時のガキじゃねぇか!あんなに大金貰っちまうようなことした覚えなかったんだが、こっちこそあんがとな…』

『いえいえ、こちらはおかげでこの人を助けられたので、良かったんです』

『あっ。どうも』

『え?あの時のねーちゃんか?坊主良くあんな騎士様達からねーちゃん連れ出したな…。坊主はどっかの貴族様か?』

『いえいえ、貴族ではないです。ただの駆け出し冒険者ですよ。おもてなしさせて頂いたらあっさり返してくれました』

『おもてなしときたか。それに坊主は冒険者とは随分苦労してるのか?まぁ良い。とりあえずここは危険だ。それにこんな遅くにあぶねーだろ。早く帰んな』


冒険者らしき人は呆れたような顔をして、再度帰るように言い含められる。

するとダンジョンから、雄叫びのようなものが聞こえ、ダンジョンの入り口周囲が揺れているようだった。


『ウボォォォーーーーーーーー!!!!!』


『ひっ!奴が近づいてきてる!』

『まずい。もうあいつらはもうダメなんだろう…。クソーッ!ここにいたら皆助からねー。ずらかるぞ!』


地響きのような叫びが聞こえた後、冒険者達が怯え出し、逃げる準備を始めた。


『坊主!ねーちゃん!このダンジョンでレッドオーガが出たんだ。並の冒険者じゃ歯が立たねーんだ。俺らも命からがらここまで…。仲間の殿のおかげで逃げてこれたが、お前達を庇いながら逃げるのは無理だ。早く逃げろ!!』


どうやらレッドオーガとやらが出たらしい。

どのくらい強力な個体なのか分からないが…


『アリアさん。レッドオーガは推奨討伐レベルはいくつですか?』

『え?えっとオーガが4レベルだから、5レベルくらいかしら…、スキーム、今回は無理よ。戻りましょ』


それは高レベルだな。親父と母さんクラスの冒険者じゃないと敵わないときた。

てことはレベルアップチャンスかもしれない!


『アリアさん。俺がここは残って殿します。あなたはこちらの方々と一緒に街に戻って下さい』

『スキームを置いて逃げるわけないでしょ。いいから早く行くわよ』

『おい坊主、ねーちゃんさっさと逃げるぞ!』


アリアさんと冒険者さんに、逃げるように言われたが、もうそこまで来てるから、逃げても戦うことにはなるだろう。


『アリアさん、冒険者さん。もうそこまで来てるので、逃げるのは難しそうです…。ほら…』


『ウボォーーー!!』


身体は赤く、筋骨隆々で身長は3m以上はありそうな巨体がダンジョンから出て、雄叫びのを上げた。

そして目の前で逃げようと準備している女性冒険者を見つけて、ニヤリと口元を歪ませた。


『まずい!サシャがやられる!』


冒険者の男がそれに気付き、助けに向かうが間に合いそうもない。

レッドオーガはその巨体で、物凄い速さで動き、拳を振りかぶって女性に殴りかかった。

問答無用で殺すのか。食うのか…。


『まっ。させないよ!』


女冒険者に俺も雷魔法付与と身体強化で加速し、近づいて、すぐさま位置交換スキルでこちら側に引き寄せた。

空振りしたレッドオーガの拳は、地面になんの抵抗も感じさせないように突き刺さり、後から風圧と音がやってきた。


バッカーン!!


あれは受けたら一撃であの世行きだな。

レッドオーガは、殴った感触がなかったことで、逃したことに気付き、あたりを見渡す。

すると、自分のところに駆け寄ってくる冒険者を発見する。すぐにターゲットを変更し、またとてつもない速さで冒険者を殴ろうと振りかぶりながら移動する。


『ウボォ?ボーッ!ウボァーー!』


それに気付いた冒険者は自分の死を覚悟して叫び、目を力一杯瞑った。


『なっ!クソー!』


しかしいつまで経っても、なんの衝撃も受けず気づけば、レッドオーガから20mほど離れた位置にいた。そしてまた地面が爆ぜる音が聞こえた。


バッカーン!!


『なっ。なにが起きた…』


男の冒険者が殺されそうなのに気付いていたので、俺は男の冒険者を位置交換で俺の後ろの空間へ移動させる。

男が呆然としているのを無視して、そのままレッドオーガに近づき、背中に右手を置いてすぐさま左手に位置交換で、バスケットボール大の魔石を取り出した。

レッドオーガは自分になにが起きたかも理解しないままに地面を殴った姿勢のまま倒れ込んだ。

そして光になって俺に吸収されていく。

残されたのは、真っ赤なバスケットボール大の魔石と、レッドオーガの2本の角が残された。


『ふぅ。なんとかなりましたね。おっ!レベルアップだ!なかなか順調だな』

『おーい。スキーム!やっぱりアンタ人間じゃないわよ!凄すぎて訳がわからないわ…』

『うーん。多分今回は運が良かったんだと思いますよ。レッドオーガが他の冒険者に気が惹かれてる間に対処できたのが大きいですよ』


そんな話をしていると、冒険者達が俺に近づいてきた。


『坊主。お前はなにもんだ?レッドオーガを瞬殺する技量といい。よくわからないが、俺たちの仲間も助けてくれたのはお前だろ?』

『まぁ。そうですね。助けられるのに見捨てるのは寝覚めが悪いので…』

『そうか。本当にありがとう。お前のおかげでみんな助かった。そういや名前を言ってなかったな。俺はボールドだ』

『俺はスキームって言います。皆さん無事で何よりです』

『あっ、アリアです。宜しくお願いします』

『そうかそうか。とんでもねー奴だなスキームは、アリアも宜しくな』


レッドオーガが来るまで、話していた冒険者が俺に話しかけてきて感謝された。なんだか照れ臭いが悪い気はしなかった。 


『あの…、とりあえず獲物を横取りしてしまったみたいなもんですけど、素材と魔石はどうしますか?』

『なんだそんなことか…。俺たちは逃げてただけだ。スキームが倒したんだ。スキームにしか貰う権利はないよ。気にせずもってけばいい』

『分かりました。ではありがたく頂きます』

『おう。そもそもスキームがいなけりゃ俺たちは奴に殺されただけだよ。俺たちは町に報告しに戻るが、スキーム達はどうする?』

『俺たちはアリアさんのレベルアップをしにここに来たので、このままダンジョンに入ります』

『おう。スキームがいりゃ大丈夫だろうが、気をつけて行けよ』

『ありがとうございます。ではまた』


やっとダンジョンに入れるな。

イレギュラーはあったけど、なんとかなったし、結果オーライだね。




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