第10話

翌日宿屋で日が出始めた位から起きた俺は、アリアさんを連れて、ギルドの訓練所に来ていた。

マールさんにギルド証を貰った際に聞いたんだが、訓練所がギルドには併設されていて、殆ど使用されていないとのことだったので、使わせてもらうことにした。

時間は有限であるので、少しでも訓練の時間を無駄にしたくないので、近場で尚且つ自由に使える所とあって、かなり助かる。


『ねぇー。スキーム。朝早すぎないかしら…。ふぁーあー』

『アリアさん。時間は有限です。少しでも訓練に時間を割いて、強くなるための努力は必須ですよ』

『そうね。頑張らないと、それじゃあ何から始まるの?』


というわけで朝から訓練だが、まずは寝起きは身体をガンガン動かすのは良くないので、有酸素運動が必要だし、ストレッチをして怪我のリスクも抑える必要がある。

なのでまずはストレッチから始める。

ただここでストレッチや有酸素運動だけを行っても時間効率が悪いので、魔力操作で身体に魔力を循環させる練習も同時に行う。


『魔力操作はできるつもりでいたけど、この循環させるっていうのは、意識してないと難しいんだけど…』


まだ始まったばかりなのに弱音を吐く…

気合が足らないな…


『アリアさんは強くなりたいのですか?訓練は楽なものなんてないですよ。気合が足りてませんね…。

それでは訓練に支障きたします』

『もちろん強くなりたいと思ってるわ。でもなんというかスタートから厳しすぎるのではないかと…』


尻すぼみに何か訴えているが、かの御仁は『気合が有ればなんでも出来る』と言っていた。いや、元気だったか?


『それではご唱和ください。いくぞー!!

1、2、3、ダーーーーー!!』


と拳を天に翳して気合を入れる。


『えええーーー!それやるの?やらなきゃダメ?』

『ダメです!もう一回いきますよ。それではご唱和ください。』

『『いーち、にー、さんっダーーーーー!!』』


これで気合が入った筈だ。



閑話休題



そんなこんなでとりあえずアリアさんは魔力操作からの循環へつなげるようにイメージ構築が必要そうだ。まずは魔力操作をさせてみる。


『じゃあ魔力操作してみましょう。右の掌に魔力を流してみてください』

『わかったわ。こう?』


右の掌に魔力は出てきているが、掌から流れ出てしまっているし、指先には魔力は来ていない。


『指先にも魔力を流して下さい』

『こうかしら?』


今度は指先先のみから出てしまっている。うーん。

解剖学とかその辺りから知識が必要なのかな?


『じゃあ、休憩にしましょう』

『はい。疲れた…。MPが殆どないわ…』


ほんの数分やっただけでこれである。無駄にMP消費しているし、魔力が出続けているだけで、外から取り込もうともしていないしな…

前世の知識と照らし合わせて、俺はMPの回復も、循環も操作もしているから、苦がなかったんだよな…

この知識はこっちでも適応されてるのか?

俺でうまくいったんだし、大丈夫だとは思うが…

まぁアリアさんにはわかってもらわないと、うまく出来なさそうだし、これは休憩がてら講義しとくか…。


『では休憩、ひいてはMPを回復させることを前提に、身体の話をしましょう』

『はい。先生!』

『返事は良し。ではまず、魔力=MPはどこにありますか?』

『それは分かるわ。人間や多種族などの身体、後は動物、モンスターの身体には魔力があるわ。そしてモンスターの場合は魔石の中に魔力を蓄積させているから、身体でしょ?』

『うーん。半分正解で、半分不正解といったところでしょうか』

『どこが違うのよ。私はそうやって教わってきたわ。それが事実よ』

『そうですね。それも事実なのでしょう。じゃあ使用された魔力はどこに消えるのでしょう?』


これもまた考えるそぶりもなく、答える。


『それは身体から出たのだから、身体の外でしょ。そんなのわかってるわ。私も学校の授業で習ったわ。それがどうしたというの?』

『では外に出て行った魔力はどうなるのでしょうか?』

『そんなの身体の外に出たのだから、その辺に散らばったのでしょう』

『そうですね。では散らばった後はどうなるんですか?』

『そんなことは知らないわ。なくなったものはなくなったのよ。そんなことまでは授業で教わらなかったわ』

『ですよね。実は外に出た魔力はその周辺の環境下に溶け込み、空気中に魔力が含まれていきます。よって空気中は、私たちが呼吸する際に必要なモノと同じように魔力も混じっています。ということは呼吸をするたびに魔力を吸収しているということが、分かるわけです。ここまでで何か質問はありますか?』

『はい。先生、じゃあ魔力は呼吸してれば回復するということですか?』


なんだか先程から呼び方が先生になっているが、気にしないことにする。


『単的に言えばそうですね。なので、休むことによって魔力は回復しますよね?』

『先生、でも学校では身体の内から湧いてくると教わりました。だから時間が経てば回復するのではないですか?』


ほう?そんな考え方もあるんだな。でもそれだと霧散した魔力が永遠に増え続けることになってしまう。この世界は地脈から魔力が生成されているようだし、この星自体が活動することで魔力を吸収し、放出していると仮定すると、人間や魔物が同じことをするのは難しいのではないかと思う。

スキルや魔法がある世界だから皆無ということはないか…

まぁ俺自体も自己再生スキルもあるしな…

しかしこの考え方でいくと、外から取り込むことを意識しなくなってしまい、長時間の魔力の使用も難しいだろう。

確たる証拠がないうちは、否定も肯定もせずに、ここは両方立てる感じがいいかな?


『そういった考えも間違いとは言いませんし、思いませんが、基本的には呼吸して、そこから魔力を取り入れると考えた方が魔力効率も改善し、今後訓練していく上でも、とても便利なのでこちらの考え方も取り入れてみてください。では俺の魔力操作・循環を見てください』


そう言って呼吸することによって意識的に外から魔力を吸収し、肺を介して、血液内に魔力を入れていき、入った魔力を心臓に届けて一気に身体全体に送り出すイメージで拍動に合わせてどんどん魔力を操作して身体を循環させていく。外から魔力を取り入れているため、消費MPはほぼない。


『どうですか?魔力は見えます?これを循環させていきます。今は体内に留めていますが、ここから身体の周囲にも纏っていきます』

『すっすごい!!こんなことができるのね。私も早く使えるようになりたい』


少し光魔法混ぜて、見やすく動かしていく。


『ではもう少し休憩がてら講義をしつつ、呼吸によって魔力を吸収するのを意識していきましょう』

『はい』


その後アリアさんは、何かを掴んだのか魔力操作が上手くなり、魔力循環スキルも獲得できた。

そこからは身体の外側に魔力を纏う訓練を行い、昼くらいに昼食をとりに町で屋台飯を頂いた。









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