四十二話 新たなスキル

 俺たちはイリスのアクティブスキル<天使の靴アンジェロ・ポーター>の効果で、動きが早くなる。


 そして追加効果で、俊敏さが地形によって左右されなくなった。


 つまり足が取られやすいこの砂漠でも、構わずに動き回る事が出来る。


 砂漠以外でも雪原や、水場といった場所でも使えるので、かなり助かりそうなスキルだ。




「すごい! 足が軽いです!」


「これなら楽勝じゃない?」


「二人とも油断するなよ!」




 走りやすくなって浮付きだしたリリアとラプスウェルに、釘を刺した瞬間。


 デザート・ワームが、激しく身体をうねらせるように暴れ出した。




「ちょっと! これじゃ近づけないわよ!」


「あらあら、困ったわねぇ……」


「丁度いいさ。イリス、新しいスキル<フラッシュバインド>も使ってみようか」


「目がなさそうだけど、大丈夫なの?」


「関係ないだろう。今回は目くらましで使う訳じゃないんだ、拘束出来ればそれでいいからな」


「分かったわ。じゃあ行くわね、アクティブスキル<フラッシュバインド>!」




 イリスがスキルを発動すると、スキルの説明欄で読んだ通り、光の玉がデザート・ワームの近くに現れる。


 その光の玉はすぐに弾けた、と思ったら散らばった光の軌跡がロープのように伸びてデザート・ワームの動きを止めていく。


 そして一秒と掛からずに、完全に動きを封じてしまった。




「止まりましたよっ、やりましたね!」


「よし! 行くぞ!」


「おおぉりゃあああぁ!!」




 俺が号令を出す前に、ラプスウェルは大剣を取り出して早速飛び掛かっていた。


 彼女に遅れないように、俺もデザート・ワームへと走り出す。


 だがその前に後衛の二人へ、軽く指示だけ飛ばしておく。




「リリアもイリスも近付きすぎないように!」


「分かってるわ」


「はい!」








 俺とラプスウェルは、動きが止まったままのデザート・ワームに対して攻撃を加えていく。


 デザート・ワームの体皮は、砂の中でも動けるような頑丈で分厚い素材。


 だがラプスウェルの攻撃力なら関係ない。


 少しずつ傷を増やしていく。


 ……だが、一撃二撃で致命傷を与えられるほど、デザート・ワームの防御力は低くないようだ。




「このっ、こいつ! なかなか硬いわね!」


「俺なんて殴ってるだけだぞ。ダメージ入っているのか全く分からん!」


「あーもう! こうなったらスキル使うわ!」




 ラプスウェルは業を煮やして、ダメージスキルを使うようだ。


 俺も合わせられれば良かったんだが……生憎、俺もイリス同様に攻撃スキルなんて持ち合わせていない。


 仕方がないので彼女が付けた細かい傷たちに向かって、追い打ちをする事に徹した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る