四十話 成功報酬
「さて、俺ぁ戻るぜ」
「忙しいのか?」
「さっきも言ったろ、モンスターの調査とかよ。他にもめんどくせぇやつが色々あんだよ」
レオニスは本当に面倒くさいと言いたさそうな顔で、後ろの部屋へと戻っていく。
俺もランクを上げてもらうという目的を、あっさりと達成したので引き止めるような事はしなかった。
するとレオニスとの話しを聞いていたみんなが、興奮気味に俺へと話しかけてくる。
「Bランクって! あたしたち一気に上がりすぎじゃない!?」
「すごい」
「あらあら。それもこれもシンさんのおかげね」
「俺は関係ないと思うが。まぁでもレオニスには感謝だな」
「そうですね!」
モンスターの強さによって『飛び級』するものだが、FからBの四段飛びは聞いた事がない。
結局はパーティの実力によって、二段飛び程度が限界だからだ。
だからみんなの騒ぎようもよく分かる。
ともかくこれでさっき眺めていたような、ランク帯が上位のクエストも受けられるようになった。
だからといってすぐにAランクを受けるのは、少し不安に感じるな。
手頃なクエストがないか、また探そうかと思ったが先程見ていたクエストの事を思い出した。
「そうだ。折角だから、さっきのデザート・ワームのクエストを受けてみないか?」
「なんでもいい、やる」
「げ、あたしは嫌なんだけど……」
「あらあら、そんな事言わないの」
「うぅ……私もちょっと……」
二人はワーム種のモンスターに苦手意識があるようだ。
見た目は確かに、気持ち悪さがあるからな……。
だがBランク以上の砂漠フィールドを移動する時には、デザート・ワームと遭遇する事は考えておかなければいけないのだ。
ここは強引にでも着いてきてもらうか。
「わかった。ならこのクエストが終わったら、飯でもなんでも奢るよ」
「いく。ぜったい、いく」
「まぁ、ルクシアはそうだよな」
元々行く事に好意的だったルクシアが、一番やる気上がってないか……?
イリスにも続けて「お酒も、一緒にお願いね?」なんて笑って言われてしまった。
「はぁ……まぁいいわ。あたしたちだけじゃ、Bランクなんてどれくらい掛かってたか分からないしね」
そう言ったラプスウェルは「ただし!」と前置きをしてきた。
「美味しいご飯もいいけど。だったらあたしは買い物に付き合ってほしいわ」
「え!? じゃ、じゃあ……私も!!」
急にラプスウェルとリリアの二人から、注文が入ってしまった。
イリスとルクシアはどうするか聞く事にした。
「二人はどうする?」
「いっぱい、たべる」
「私はご飯でも……あ、だったらこうするのはどうかしら」
ルクシアは既に食べる事しか考えてなさそうだったが、イリスがなにか思い付いたような顔をする。
俺は少し嫌な予感がしていたが、元々この話題を出したのが俺なので逃げるわけにもいかない。
「今日はみんなで来てるし、日替わりで一人ずつデートっていうのはどう?」
「それでお願いしますっ!」
「べ、別にあたしはそういうつもりで言ったんじゃないわよ! ただちょっと服とか、買ってもらえればって思っただけで」
「はやく、たべたい」
こうして一瞬で、俺の数日分の予定が埋められてしまった。
一人一人とって言われてもな……。
まぁ、仲を深めるいい機会……なのか?
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