三十九話 ネゴシエートは……会話から?
俺はレオニスに向かって、このパーティのランク昇格を頼むつもりだった。
おそらくだがギルドとしては、出来るだけ金は払いたくはないだろう。
けれどそう簡単にランクを上げても、そのパーティの実力が伴っていなければ意味がない。
もしかすると嘘の報告かもしれないしな。
だからこそ、ここでレオニスに直接会って、俺の名前を使えばCランク程度なら……なんて考えていた。
でもそんな事考えるだけ無駄だったのか。
「オレはな、あの夜狼のクエストを、そろそろ貼り出そうと思ってたんだよ」
「なんだって」
「あの夜狼はな。一週間くらい前だったか? 森の中に一匹でいるところを見たってやつがいてな」
「その時は群れじゃなかったという事か」
「ああ、そいつの報告じゃあな」
だが俺たちがウルフと戦った時は、最後に倒したウルフが呼んだように見えた。
実際はそうではなく、偶然だったのか……?
「それでな。夜狼の調査をしていたところに、お前らから討伐報告があったんだよ」
「なるほど」
「んで、実際<実りの森>を調べてみると、確かに報告の場所に戦闘の痕跡があった。それに森の奥まで行っても、夜狼が見当たらなかった」
「だから信用したって事か」
「そうだ」
それくらい偽装は出来そうな気もするが、レオニスも長年の冒険者として、獣人族としての経験か。
戦闘の痕跡が偽装か、本物なのかは見抜けるという事だろう。
「俺らとしちゃあよ。あんまり金は出したくねぇし、強いパーティが増える方が助かるしな」
「やっぱりそんなところだよな」
「がはは。それくらいは分かるか」
「これでもSランクのパーティだったからな、多少は事情を理解してるさ」
どうやら最近は、ギルドの行うクエストの調査段階と、俺たち冒険者がクエストに出たタイミングでは、難易度の差が大きく違う場合が増えてきていたのだ。
だが全部がそうではなく、調査した通りの難易度の事もあったらしい。
ギルド側でも理由は分からず、今回のように特別報酬を渡すなんて事も増えていたのだろう。
「まぁとにかく理由は分からねぇが、ここ数日モンスターが活発化しているってのは感じていたわけよ」
「ふむ。なら俺たちでもなにか分かったら、すぐに知らせるようにする」
「おう。頼むな」
そう言った彼は「がはは!」と笑いながら俺の肩を叩く。
話しが切れたこのタイミングで、俺は報酬の事を聞く事にした。
既に何度も見た、豪快な笑い方のレオニスに尋ねる。
「それで? 話しが早いのは助かるんだが、ランクはいくつまで上げてもらえるんだ」
「あ? そうだなぁ……シン、お前がいるならBでも大丈夫だろ」
Bランクは凄いな。
これは俺が元々予想していたよりも、一つ高いランクだ。
それだけレオニスが、俺の事を信頼してくれているという事だろうか。
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