三十八話 冒険者ギルドの長
俺たちはギルドの受付嬢に、話しを聞く事にした。
「すまない。以前に<実りの森>で夜狼を討伐したんだが、その時の報酬がどうなっているのか確認してほしい」
「夜狼ですか……? かしこまりました。パーティ名をお伺いします」
「
「はい。それでは少々お待ちください」
受付嬢はそう言うと席を立って奥の部屋まで入っていった。
待たされてから五分ほど経つと、受付嬢が壮年の獣人族を一人連れてきた。
なるほど、レオニスが直々にか。
「あ? なんだシンか。Fランクが夜狼を倒したっていうからよ、ツラでも拝もうかと思ってたのに」
「俺で悪かったな、レオニス」
受付嬢が連れてきた男と俺には、面識があった。
こいつは獅子のたてがみを連想させる『もみあげ』が印象的な、ライオン種がサブの獣人族レオニスだ。
レオニスはこの冒険者ギルドを管理しているギルド長。
だが……いつ見ても、ギルドの制服がなんとも似合っていないんだよな。
「がははっ! お前は相変わらず、生意気そうじゃねぇか!」
「そんな事ないですよ。レオニスさんもお変わりないようで」
レオニスが豪快に笑うので俺は反対に、わざと丁寧に返してやる。
するとレオニスは、身体中のふさふさした毛を逆立てながら吼えてきた。
「うああっ!? なんだそりゃあ気持ちわりぃ!! お前、今後一生その喋り方はすんじゃねぇぞ!!」
「はは、悪かったよ」
俺とレオニスは久々に会ったので、つい会話に花を咲かせてしまった。
そこに割り込むように、リリアが声を掛けてきた。
「あのー、お話し中すいませんが……」
「エルフの嬢ちゃんか。どうした?」
「はい、私はエルフ族のリリアと申します。レオニスさん? ってシンさんとお知り合いなんですか」
「ああ、昔ちょっとな。こいつがまだこーんな小せぇ頃でよ」
レオニスが自分の手を、腰よりも下辺りの位置で固定する。
リリアが興味深そうに、その話しを聞こうとしていた。
俺は少し恥ずかしくなったのと、遊びにきた訳ではないので話しに割り込み返す事にする。
「俺の話しはいいだろう、それよりレオニス。夜狼の件だ」
「おう。そうだったな」
「先に言っておくと、俺は夜狼の討伐報酬でパーティランクを上げてほしいと思っている」
「ほう?」
うまく本題に入る事が出来た俺は、レオニスに対して要求を告げる事にした。
こういう時は、まず自分の主張を伝える事で、相手の考えを誘導出来る場合もあるからだ。
それを聞いたレオニスがまた「がはは!」と大きい口を開いていた。
「勿論いいぜ、というか俺は元々そのつもりだった」
「俺がいなくてもそうしたって事か?」
「そりゃ当たり前だ。そうしたらお前がいた、だったらわざわざ小難しい事考えずに、パーティランクを上げちまえばいいだけだ」
ギルドの規定では特別報酬を渡す場合、実力に応じたランクまで引き上げる『飛び級』。
もしくは、そのモンスターの危険度によって固定の金額を支払う。
このどちらかが決まりとなっている。
マニーの場合は、その金額設定がこのように規定付けされている。
Sー1,000,000マニー
Aー500,000マニー
Bー100,000マニー
Cー50,000マニー
今回の夜狼はおそらくBランク相当。
十万マニーとなれば、俺一人ならなんとか一ヶ月は暮らせる金額だ。
だが今はその金よりも、このパーティのランクを上げておきたい。
せめてCランクにでも上がれたら、受けられるクエストがかなり広くなるからだ。
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