三十七話 確認作業
「おかえりなさいませ」
転移陣を使って、神殿へと戻ってきた俺たち。
それを出迎えてくれたのはリタだった。
俺たちが戻ってくるまで、ずっとここに居たのだろうか。
労いの一つでも言っておこう。
「神に会えたよ、助かった。ありがとう」
「いいえ。これが私の役割ですから、お気になさらず」
そう言ったリタは話しが終わったとばかりに、ぺこりと頭を下げると俺たちから離れる。
彼女は俺たちが神殿へ入ってから、最初に見た位置に立った。
俺たちから離れたリタに対してリリアとルクシアは、声を掛けて前を歩いていった。
「ありがとうございました!」
「また、くる」
それに続くように、残りの二人もリタに一言伝えてから神殿を出ていく。
最後に俺はリタに対して、軽く手をあげるような動作をしてから歩きだす。
それを受けたリタは、神殿を出ていく俺たちに向かって「またお越しください」とまた頭を下げた。
神殿を出た俺たちは、リリアの提案通り冒険者ギルドへと顔を出していた。
「うーん、あんまりいいクエストないですね」
「そう? あたしはこれがいいと思うわ」
「これ」
「あらあら、じゃあ私は……これで」
俺たちはクエストのリストを眺めていた。
すると三人とも、行きたい場所がバラバラだった。
ってイリスは気分で選んでいないか……?
「えー! じゃあ私は……これですっ!」
三人がすぐに決まっていたのに急かされたのか、リリアは確認もせずに指でとあるクエストを指さした。
それは砂漠フィールド<ワイバーンの通り道>が指定場所の『デザート・ワームの討伐』だった。
「うわ、ワームって……あたしはやりたくないわよ」
「さばく、あつい」
「あらあら」
二人が文句を言っていたが、俺は結構乗り気だ。
あのフィールドはその名前の通り、ドラゴン種のワイバーンが通る道となっている。
だがそれは『渡り』の時期が来た時だけの話しだ。
それ以外の時期は特に大きな危険もないフィールドのはず。
なのにこのクエストはBランクモンスターであるデザート・ワーム一体の討伐。
このモンスターは一体だとそれほど脅威にはならない。
本当に危険なのは、複数体を相手にした時だけだ。
四、五体もいればSランクのクエストとして出されているだろう。
だがBランク以上の夜狼を倒した俺たちなら、デザート・ワームは丁度いいんじゃないかと思ったからだ。
とはいえ今の俺たちは、ランクがまだ足りていない。
ウルフのクエスト報酬は受け取ったが、夜狼の分は確認するから後日と言われた。
流石にFランクのパーティが、Bランクモンスターを倒したとすればある程度の飛び級はあるだろう。
ギルドに来たのは、その話しを聞くつもりもあった。
「クエストを決めるのは、夜狼の報酬がどうなったか聞いてからだな」
「あっ、そうでした!」
「わすれてた」
「あ、あたしは覚えてたわよ!」
「あらあら」
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