三十六話 神との別れ

 少し重苦しくなってしまった空気をかき消すように、リリアが手を上げた。




「はい! 次は私のをお願いしたいですっ」


「分かったわ、リリアちゃんね」




 リリアの声を聞いた神は、彼女のスキル表を出してくれた。


 ポイントを確認すると、なにか一つくらいは開放出来そうだった。


 それを見た俺はリリアに確認を取る。




「リリアはどんなスキルが欲しいんだ?」


「えっと……自分の身を守れるような物があれば、って思うんですけど」




 この前のウルフと戦った時に、かなり危ない時があったのを覚えている。


 身を守るスキルが欲しいと思うのも、無理はないだろう。


 俺のスキルを見せたのも、影響があったのかもしれない。




「そうだな……ならこれが良さそうじゃないか?」


「<風の障壁エアロフォース>?」


「それは使用者の周囲に一定時間、風を発生させてモンスターを近寄らせないっていうスキルね」


「なんだか凄そうです!」




 選んだスキルの解説を神がしてくれた。


 リリアの反応も、まぁ上々といったところか。




「じゃあそれで決まりかしら?」


「はいっ!」


「はいはい、じゃあすぐに……更新っと、はいオッケー」




 弓などの遠距離武器はどうしても、近接戦闘には向かない。


 だから一人で距離を取って、射撃してもらわなければいけない。


 だがこれでリリアが単独行動しても、かなりの安全が確保されたと思う。




「ありがとうございます!」


「いえいえ、それが仕事だからね。それで、まだの子はいたかしら?」




 ラプスウェルを除けば、残ったのは俺だけだ。


 だがまだ少し考えている事があり、今回ポイントは使わないつもりだった。




「後は俺だけだが……ポイントを少し貯めておきたい。だから今回は大丈夫だ」


「あらそう?」


「ああ、だから俺たちを神殿まで戻してほしい」




 俺は神にそう伝えると、この何もない空間から元の神殿へと繋がる転移陣ポータルを開いてもらう事にする。


 リリアやイリスは少し名残惜しそうだが、未だにへそを曲げたままのラプスウェルや、一つもスキル開放出来なかったルクシアは早く帰りたいといった顔をしていたからな。


 神がまたカタカタと音を鳴らすと、俺たちの足元に転移陣が現れた。




「そうだ! 戻ったら早速クエスト受けに行きませんか?」


「二人の新しいスキルも試したいしな、いいんじゃないか。みんなはどうだ?」


「別に、あたしはどっちでもいいわ」


「モンスターたおす、ポイントもらう」


「あらあら、すっかりやる気ね」




 俺たちがわいわいと盛り上がっているところに、神が声を掛けてきた。




「準備できたから、みんな送るわよー」


「ああ、すぐに送ってくれ」




 俺が返事をすると、すぐに転移陣から光が溢れる。


 そして視界が真っ白になる直前、神の言葉が微かに届いた。




「またね、シンくん。これからも楽しみにしてるわ」

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